第34話 どしたん話聞こか?
水着イベントは学園の修学旅行で魔族領と人族領の間にある孤島に行くというものである。
一応この孤島には魔族にも人族にも属さないということで原住民が不可侵非暴力を貫いているという設定があります。
まあゲームの中立国のお約束といえばお約束なんですが、終盤になると魔族に占領されて火の海になります。
なのでこのリゾート気分を味わえるのは期間限定で、まだルート序盤ということでがっつりエロいシーンはないのですが、イベントの中では人気イベントなっています。
本来なら喜ぶべきイベントではあるのですが、ヒロインたちのメンタルが逝ってるので水着状態で目が死んでいます。
アイドルが知名度を上げるために無理矢理グラビアをさせられてる時みたいな顔で悲壮感がやばいです。
若い身空でこんなところで無駄な時間を過ごしていると思うと中身は普通のおっさんなので欠片もない良心が痛くなってきます。
年長者として一肌脱ぐしかないようです。
「どうした貴様ら? 私でよければ話を聞こう」
「「「スラン君……」」」
──
「イクスが勝手に学校辞めて聖騎士になったていうから教会に行ってるのに顔を合わせてくれなくて……」
「うんうん、それはイクスが悪いな」
「豚、イクスに股間をもう一回しばくって手紙をやっても返事が来なくて」
「うんうん、それもイクスが悪いな」
「イクスの貯金ギャンブルで擦ってから口聞いてくれないくて」
「うんうん、それもイクスが悪いな」
「私のせいでイクスが大切にしていた村が燃えて」
「うんうん、それもイクスが悪いな」
「無給で一生働かせてやると言ったら断られた」
「うんうん、それもイクスが悪いな」
近くの海の家的な場所で話を聞いて、内容の良し悪しに関係なくただひたすらに頷いて行く。
塞ぎ込んでいる人間に正論言っても言葉を受け入れられるだけの元気がないから否定された気分になってさらにグチャってなるだけですからね。
明らかにギルティな人間もいますが突っ込まずに肯定に限ります。
「全てイクスが悪い。一番はイクスを粛清することだが残念だが本人が不在なのでそれは不可能だ。今現在貴様らができる報復は現状を全力で楽しむことだけ。相手が悪いと言うのにこちらが不利益を被るというのも癪だろう?」
「うんそうだよね! 何も悪くないんだから楽しまなきゃ!」
「頭は回るようね豚! うちのブレインとして専用豚小屋を用意してあげてもいいわよ!」
「ここでしかない賭け事があるのに自重するだけ損だしね! 全財産ベットしないと!」
「確かに落ち込んでても何の解決しませんものね。ありがとうございますスラン様」
「ふむ。確かに落ち込むことは無駄でしかない行為だ。就業条件を改善して寝ながら働けるようにしてやるのも追加するか」
イクスへ全ての咎を押し付けることで、ヒロインたちが活気を取り戻すと、それぞれ興味のある場所──各々のイベント担当箇所に走り出していく。
なんだかローゼリンデだけ空元気な感じがしますね。
善人なので前の戦いで裏切りブレードしたのを引きずっているのかもしれません。
俺はこれから密輸した『東雲』を確認しないといけないので、後で少し話でも聞いて見ましょうか。
イクスみたいに闇堕ちすると行動が予測しづらくて不安になりますし、この期間中にシアから鎧密輸するのに協力してもらう見返りに聖女をゲットしろ言われてますし。
ロロナとも単独で接触しなければいけませんがこの修学旅行こと水着バカンスイベントは一週間あるから余裕でなんとかなるでしょ。
さてヒロインたちも見えなくなったし身の安全を確保するために取り寄せた『東雲』を確認に行きましょうか。
飛んで密輸会場である入江の馬鹿デカ洞窟にゴーです。
ファラスとイクスの動きが見えんので何が起こるかわからないことと、この世界手元に鎧がないと詰むことが多いのでシアに「鎧持って行きたいんだけど」とごねてみたのですが言ってみるもんですね。
時期もなんか今魔族との密輸が活性化しまくって有事の際に戦ってくれる人族の鎧乗りがいて欲しいと言うことで密輸の審査も通りやすくなってたみたいですし。
まあ何かあった時はゴーしなきゃ行けませんがどうせそんなことになったら嫌でも戦わなきゃならん事態でしょうし、鎧なくて生身で襲撃ボンバー食うより遥かにマシでしょうし。
第一何か軍事的に大事な拠点とかではないので襲撃が起きる可能性も低いですしね。
全速で飛ばすと秒で到着しました。
密輸とか言いながら裏で政府が管理しているだけあってデカいですね。
もう潜んでないので密輸とは言わんでしょこれ。
学園の旅行開始の挨拶と密輸の手続きがバッティングしてしまったのでリリアンとシルヴィアに手続きをしてもらったんですがどこでしょうか。
二人に案内されなければ『東雲』の場所がわかりません。
ああいました。
周りを往来する見慣れぬアウトローにシルヴィアが警戒するようにキョロキョロして、リリアンが突っ立っているだけで威圧されたらしいアウトローが自ら避けて通って行ってます。
「終わったか」
「ああ終わった。荷はこっちだ。ついてこい」
強者だとオーラでわかるのかリリアンが歩き出すといかにもと言ったアウトロー達が道を開けていきます。
暴力に生きるものだから強さに敏感なのかもしれませんね。
奥についていくとそのまま人族用と書いてあるプレートの下げられた倉庫の中に入っていきます。
中には左右にコンテナが並んでおり、どっちかに鎧、もう一方がそれ以外の密輸品てところでしょうか。
「右側に鎧が置いてある。右奥から一番目と二番目が私たちの鎧だ」
「他にも人族で鎧を持ってきているやつがいるのか」
我々の分の他にも三つコンテナがある。
「お、これはスラン殿」
誰のもんですかと思っていると後ろから声をかけられ振り向くと老執事然とした聖騎士から声をかけられた。
確か名前は忘れたがゲームでいつもファラスの横にいた奴だ。
ラウンズだったけど特に活躍がなかったので正直それ以外に何も思い出せないですね。
「お初にお目にかかります。ラウンズのローデンと申します。ぜひお見知りおきを」
「デストン侯爵家の嫡男スラン・デストンだ。こちらこそよろしく頼む。教会がこんなところでどうしたんだ?」
「聖女様の警護のためでございます。魔族がここで一悶着起こそうと言う噂が立ってますから。貴殿も自衛のために鎧を?」
このイベントではローゼリンデの護衛はついてこないと思っていたが、バカンスの邪魔にならないようにローゼリンデにバレない形で護衛してたんですね。
聖騎士も大変ですね。
話の途中で悪いんですがさっきからフード被った怪しげな聖騎士がいらしゃるんですがその方はどなたで?
「鎧がないと幾つ命があっても足りんからな。後ろのは新人か?」
「そのようなものです。口が聞けぬもので紹介は私の方から。新しいラウンズのルージュです」
ルージュ?
知りませんね。
まあラウンズも全員出てきてないし、単純に影が薄すぎて忘れている可能性もありますけど。
と言うよりもルージュって仇ぽいセクシー系のイメージがありますから白フード目深に被った陰気な感じだとしっくりきませんね。
「よろしく頼む」
ルージュがぺこりとお辞儀してくるのでこちらも返すとローデンが口を開く。
「スラン殿と知り合えるのは光栄なことだ。よく胸に刻んで置くのだぞルージュ。では我々は護衛に戻らんければいけませんのでこれで」
「ああ、わかった。頑張ってくれ」
ただの護衛だと思いますが奇しくもこの島に魔族と教会がいることを把握した瞬間きな臭く感じてきましたね。
まあ魔王の下で四天王やってるイクスから情報もらっているシアからなんの情報もないし、こんなところドッカンしてもしょうがないからないとは思うんですけど。
受け取った鎧も確認できましたし、聖騎士から干渉されにくいところでローゼリンデをキングスゲインにスカウトに行きますか。
────
続きを書くモチベになるので、是非とも星⭐︎⭐︎⭐︎、フォローお願いします!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます