第29話 それは残像だ
『ああああああああ!?』
『な、何が起こっている!? 光が踊るたびに鎧が落ちていく? 未知の魔法か!? うわあああああ!!』
出撃すると『東雲』が速すぎる為に秒で接敵したので、現在ピンボールのような感じで悪質タックルを繰り返しています。
敵からは移動速度が速すぎって見えていないようで、「なんか周り死んどるんですけど!?」と驚いているので、そこを狙って悪質タックルを叩き込み、そしたらまた驚いて動きが止まるのでタックルし、いつの間にか無限俺のターン状態が確立しかけています。
相手から狙われないというのは精神的に非常に負担が少なくてよろしいですね。
ささっと敵の大将のテフロンを落として終わらせましょうか。
あ、そういえばリリアンを置いていてしまってる。
通常状態がクソ速いという状態に慣れていない故の弊害ですね。
「テフロンはわかりやすく角ついてるからすぐわかるはずなんだが」
見つけましたね。
『人族が! もうこんなところまで攻め込んできたか!』
周りの坊主の魔族の鎧とは違い、頭の両サイドに二本の曲がり角を持つ鎧が俺と同時に姿を確認したようでそう叫ぶ。
こいつが敵の大将テフロンで今回のイベントで本来はイクスが倒すはずだったボスだ。
序盤のボスであるので強くない設定だが普通に肉眼で捕捉しにくい俺を捕捉しているところを見ると観察眼はあるらしい。
『総員蜂の巣に……グアああああああ!!』
まあ観察眼あったとしても強くないので大した意味はありませんが。
そのまま悪質タックルを決めて堕とします。
『見えない敵だ! 総員360°囲め! テフロン様死亡のためプランDに移行する!』
本来のストーリーならボス撃破のここで魔族が撤退して戦闘は終わるはずなんですが、継続してますね。
まああれは周りの聖騎士の鎧がいたこともあって不利を悟っただけで単騎ならそりゃどうにかなると思うか。
敵のど真ん中ということもあり、穴を無くすように360°に鎧を展開して魔法を打ち始めた。
自分たちにも当たると思うんですがよくやりますね。
『あああああああああ!!』
避けて展開する鎧の一体を悪質タックルで落とす。
また倒した位置から捕捉されても面白くないので『オーバーライド』を発動させてトップギアに持っていき悪質タックルをして鎧を始末しつつ移動する。
200%悪質タックルは伊達じゃないということで本来凹むだけで済むはずのところがバラバラに砕け散っていく。
ぶつかった後の鎧が障害物にならないのでスイスイ殲滅できますね。
包囲網突破も割とすぐ行けるかもしれません。
『増援が来たぞ! 怯むな! こいつは危険すぎる! なんとしてでもここで落とす必要がある!』
現状での目算を立てているとこちらに向けて百以上の大量の鎧がくるのが見えた。
呼びすぎですよ。
他の地域放棄してこっちに寄越したクラスだろこれ。
魔族側が将来的に危うくなるレベルのものと見積もられているらしい。
なまじ性能がいいだけにそれが災いしたみたいだな。
来てしまったものはしょうがないので増援ごとぶっちぎりたいと思います。
早くリリアンかシアの近衛騎士、聖騎士が来てくれれば楽なので、早く来て欲しいですね。
「あいつ頑張ってるしもうよくね」とかなってないことを祈ります。
──
地獄絵図だった。
敵の姿を捉えられずに一方的にやられていく。
『そこか! ざ、残像!? うああああああ!』
たまに姿を晒したと思うと実態のない残像で、釣られた味方がバラバラにされて落ちていく。
魔王から精霊鎧を下賜される予定にある若手NO.1と名高いエースパイロットであるユールでさえも戦慄せざるを得ない。
テフロンが堕ちたことによりテフロンの右腕であるリーベが増援を呼んでいるが悪手だとしか思えなかった。
雑魚がいくら増えたところであれに敵うはずがない。
ただイタズラに被害を増やすだけだ。
なまじ実力があるだけに相手との覆せないほどの実力差がユールにはわかってしまっていた。
見えないほどの速度をまともに操縦できている時点でおかしいというのに、それを手足のように操る技量。
鎧の性能も常軌を逸しているが、あんな処刑装置のようなスペックの鎧を臆することなく自由自在に動かせる乗り手が一番おかしい。
きっと己の命などどうとも思っていない戦闘狂に違いない。
ユールは味方をガラクタにしていく鎧の中で哄笑を上げる乗り手の姿を幻視すると一目散に逃げていく。
「こいつらと心中するのはごめんだ!」
敵前逃亡は重罪でバレれば極刑も免れないが、目の前にある確実な死より逃げられる可能性がる分遥かにマシだった。
「鎧に乗ってるのもまずい! 捕捉されかねない!」
途中から鎧に乗ってること自体がもう「でかい的です。狙ってください」と言っているようなものだと気づき、無傷の鎧をその場に置き去りにして逃げる。
この時の自分の行動が正しかったと彼はこの戦いが終わった後すぐ知る。
増援含めあの場にいた自分以外の全ての鎧が一体の鎧によって全滅させられたという報が軍部から通達されることで。
──
もうヘトヘトにございます。
増援で魔法が倍になって飛び交うわ。
魔族達が見えないからってめちゃくちゃに武器回して危ないわで先のこと関係なしに悪質タックルをぶち込みまくったらここら辺の魔族の鎧が全滅して魔石がカスカスでガス欠寸前になってました。
「戦神怒涛の戦い振りだった。見惚れたぞ」
何観戦してるんですかリリアンさん。
追いついたのなら援護してくださいよ。
ああ、出撃する前の自分をぶん殴りたい。
性能がいいから何とかなるでしょって飛び込んでいくもんじゃないんですよまったく。
二度と「なんか行ける気がする」でゴーしません。
「貴様のお眼鏡に敵うとは戦って良かったよ。もう魔石がつきそうだから途中で底をついたら運んでもらっていいか?」
「任せろ」
リリアンの男らしい返事を聞くと野営地に戻っていく。
運ばれて帰還するのもダサいので魔石が切れませんようにと内心で祈る。
『魔族への侵略をやめろ!!』
そう祈りながら戻っていると野営地の前に赤い鎧──『紅蓮真紅』が現れるのが見えた。
平和を訴えております。
イクスはそういう系の主人公ではでは無いというのに。
終盤で魔王から「邪悪な魔族ガーとか言っておきながら人族から先に侵略を仕掛けて来ました」という事実を話されても魔王を叩きのめすというのに一体彼に何があったというんでしょうか。
魔族殲滅の最先鋒から魔族のことを擁護する発言が飛び出し聖騎士達が愕然としております。
ああいけません。
何だかコロシアムと監禁コンボで人族に見切りをつけて魔族側に行ったような気がして来ました。
ヒロインと一緒にゴメリンコした方がいいかもしれません。
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