第28話 出撃する豚野郎
試運転をこなし、後顧の憂いを絶ってから食って寝って今日は大攻勢当日です。
本来ならここでイクスがヒロインたちと来るはずなのですが、ヒロインたちしか来ておりません。
当たり前のようにこの戦いの主役が来ないことにより、聖騎士たちに動揺が走っています。
本当にどこに行ったのでしょうかイクスは。
不肖俺も身を隠しているだけだと思っていましたが、今ここにいないということはマジで失踪した可能性が高いです。
こんなところでヘタレ主人公ムーブをかまされても困ります。
流石にファラスもこの事態をヤバスギィと思っているのか、いつもの仕事ぶん投げクソ上司ムーブをやめて、簡易的な壇場を作ってお話をしようとしています。
「諸君らも知っての通り、今現在我らを救いに導く御手である救世主は不在だ。だが我らは悲観してはならない。この戦いは『預言』に記されていないこと──最初から救世主が来ることが保証されていないことだからだ』
あら激励するかと思ったら早速嘘つきましたね。
がっつり救世主たちは勝つが人族は魔族に大敗すると『預言』に書いてあるんですが。
聖騎士がファラスの嘘に動揺せずに黙って聴いているところを見ると、この『預言』についてはあらかじめ布告されていなかったということらしい。
民衆に関しては「負ける」だの「領地が壊滅する」など都合の悪い部分について伏せて伝えられているが、聖騎士サイドの人間はちゃんと本元の『預言』を知っているかと思ったっていただけに意外だ。
本家本元の『預言』を知っているのは教会でも一部だけなんだな。
まあ冷静に考えれば「自分たちが敗れて死ぬ」なんて『預言』伝えれば流石に士気が下がるし、聖騎士達に都合の悪い『預言』を伝える必要がないか。
死ななければいけない人間に逃げられても一大事だしな。
あまり伝え過ぎると割と外れる『預言』が外れた時の周りの言い訳も大変だと言うこともあるかもしれないが。
「『預言』に記されていない余白の部分まで我々が彼らに寄りかかるのは怠惰だと言わざるを得ない。我々人族は救世主にただ依存するために存在するのではない。預言の記された時に彼らが万全に動けるための環境を用意するのための存在なのだ。『預言』に記されていない今現在誰が死力を尽くさなければならないと思う? 我々だ! この場で誰が必要とされ、救いへと人類を導くものだと思う? 我々だ! そう我々こそが今この場での主役なのだ! 我々には死力を尽くし、明日へと人々を導く義務がある!」
「おおおおお!」
いや他人任せはダメですよ的なことを周りくどく言うと仕込みなのかわからないが声が上がり、全体に伝播していく。
「さあ、共に剣を取ろう諸君! 人族の救いへの道を切り開くために!」
「おおおお!」「我々がやらねばならんのだ!」「救世主様、聖女様、ひいては人族のために!」
最後に発破の一声をかけると周りの聖騎士たちの声が爆発する。
テンション爆上げですね。
救世主がいないという問題を棚上げしている感がしないでもないですが、まあ本人たちが気にならんのならそれでいいでしょう。
ここでギスって話進まんのもそれはそれでどう転ぶのかわからなすぎて面倒ですし。
流石にガチで失踪はストーリーライン全滅するかもしれんし、これ終わったらイクスの捜索も始めた方がいいか。
流石に未知のルートに入っているかもしれん状況で今までのストーリーの大筋もなくなったら一大事だしな。
まあシアルートみたいに大筋から始めから外れてるルートもないではないが。
「お飾りの聖騎士長と思いましたが口は回るようですね」
救世主不在で教会がグダって機嫌良しだったがサンドバックにしていた空気仮面が立て直したことにシアが閉口する。
上司の機嫌が悪いのでそろそろ出撃した方が宜しそうですね。
敵の魔族も戦艦とか持ってきて準備万端って感じだしな。
「それではそろそろ行って参ります」
「ええ、頼みましたよスラン。武功を全て独り占めにして聖女と聖騎士たちのメンツを潰してください」
「御意に」
めちゃくちゃ言うな。
全部は無理に決まってるので大将首だけやったらそれなりの数狩って言い訳しとくか。
一応今回は王命で聖騎士と共同戦線を張っているからやり過ぎると王とファラスがブチギレる可能も無きにしも非だからな。
「私と共に来い。大将首を落としにいく」
「うむ。わかった」
リリアンに一声かけると豚野郎専用鎧のゴールド鎧『東雲』に乗る。
『全軍出撃』
指揮官であるファラスの声が聞こえると、人族魔族両軍の鎧が前に出て戦端が開かれる。
俺も『障壁』張ってから今回のボスに当たる魔族軍の大将エルザールの元に向けて魔族軍へと突っ込んでいく。
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