第24話 救世主壊れる



 家にゴーゴーしているのですが、なぜか後ろから大破──四肢と頭が吹っ飛んだ『獅子王』に乗ったリリアンがフラフラしながら『飛行』してついてきます。

 帰り道が一緒かな。

 それとも負けた上に義務グヘヘも豚野郎に断られた屈辱を晴らすためにファイト所望でしょうか。


「貴様、鎧に乗って追ってくるとはなんのつもりだ。五秒以内に答えろ。できなければそのポンコツごと今ここで撃ち落とす」


「先ほどはお前に王国のマナーに則って尋ねたが。私にとってアマゾネスとしての誇りに関わってくることだ。すまないがお前の意思に関係なくさせてもらう」


 嘘ですね。

 それなら鎧に乗る必要がないでしょうに。

 ファイトご所望なようなので魔法打ちますね。

 本人は分かってるかどうか知らないですけど、『飛行』の不安定さ的に魔力増幅機構も損傷してろくに機能してないので鎧での反撃できそうになさそうですし。

『獅子王』のコクピットを開けたまま操縦するリリアンに向けて『赤十字』を放つ。


「や、やめろ! まだ話の途中だ!」


 腐ってもエンドコンテンツ担当らしく広範囲の焼き払いを避けてくる。

 反撃してこないところを見ると攻撃の意思はないのか。

 早とちりだったかもしれないかな。

 続きを聞いておきましょうか。


「鎧は専属剣闘士をクビになったからコロシアムに置けなくなったからで、仕方なくだ。攻撃の意思はない」


 剣闘士クビになったのか。

 いやでもゲームの方ではグヘヘした後も剣闘士続けてたしな。


「クビになった? 一回敗北した程度でスター選手を解雇するわけないだろ」


「オーナーが熱心なスコア教の信徒で、救世主の悪評をコロシアムに刻むことに激怒したからだ。理性が飛んでるんじゃないかと思うほどカンカンだった」


 オーナーが熱心なスコア教徒で救世主信者。

 ツーアウトですね。

 そりゃ救世主を愚弄しているとしか思えない『イクスの浮気野郎』が優勝して、尚且つコロシアムの歴代優勝者の名に名前刻むともなれば、腑煮えくり返るか。

 なまじ強いだけに警戒したが、筋は通ってるし信じてもいいか。


「つまり私のせいで失職したということか」


「そうだ」


 聞いたのはこっちだけどはっきり言いますね。

 失職の悲惨さはあっちの世界で嫌というほど知っているので良心にきますね。

 体が保つならグヘヘが目的ということでサクッとグヘヘしてバイバイすればいいんですが、ちょっと歩くだけで死にそうになったからな。

 もはや楽しめないというそういうレベルじゃなく、最悪そのままあの世に行きそうなんだよな。

 ヤりながら魔法を使えればなんとかいけんこともなさそうですけど、快楽で集中乱れまくるから魔法を使いながらは絶対無理だしな。

 やっぱり痩せて豚野郎ボディの呪縛から解放されない限りは無理だな。


「失職したことについては謝ろう。だがお前の要求には答えられん。感情の問題じゃなく、肉体の問題でな。少し期間を空けて問題が解消されたならば貴様の要求に応えよう」


「時間置いてからか。お前が逃げないという保証がどこにあるんだ」


「信じてもらう以外ないな」


「もしもがあっては困る。今できないのであれば、時が来るまでお前を監視しながら待つことになる」


 いや教えとか大事なのはわかるんですけど、もうちょっと融通が効かないんですかね。

 ゲームとかでよくある頭の硬い部族設定ここでされても困るんですよね。

 あれやこれやと言うのも面倒になってきたな。


「好きにしろ。寮の俺の部屋の空き部屋で時が来るまでゆるりと待っているがいい」


「ふむ。それならば一先ずそれで手を打とう」


 リリアンを引き連れて寮に戻る。


「ご主人様、お帰りなさ……」


 寮に戻ると上司が屈強なアマゾネスと共に戻ってきたせいか絶句する。


「これから何か争いごとが?」


「そうではない。客人だ。しばらく逗留することになったからよろしく頼む」


「あっ、はい」


 抗争勃発かと思ったのか、青い顔で尋ねてきたので心配無用であることを告げる。

 シルヴィアの精神衛生的にも早く痩せないとですね。


 ──


 イクスは女子寮の懲罰房の檻の中に閉じ込められていた。

 昏倒から回復したイクスが逃げないようにとヒロインたちによって放り込まれいたのだ。

 彼はそこで夜が更けてから目を覚ました。


「1……2……3……」


 目を覚ますとすぐに力の渇望のようなものに襲われ、独房の中で腕立て伏せを始める。


「スランンン!」


 腕立て伏せの回数をこなすごとになぜ力の渇望に襲われていたのか、わかってきた。

 短い期間に自分が負けてはいけないと思う相手──スランに二連敗したからだ。

 悔しさ。

 内から溢れてくる悔しさからもはや善悪、理屈やヒロインを関係なくスランに勝ちたいという願望が喚起される。

 彼の中ですでに救世主としての使命や恋愛、人間関係など何も意味のなさないものに変わり、イクスにとってその一事だけが最も大事なことに置き換わっていた。


「腕立て伏せ! これではダメだ! もっと強いものでなければ!」


 鍛えれば鍛えるほど超回復など挟まずにそのまま強くなる超常的な肉体を持つイクスは千回を超えた時に腕立て伏せに見切りをつけ、檻を拳で打ち破ると自らを鍛えるため外界に向けて走り出す。


「うおおおおお! スランンン!」


 ヒロインたちとイチャイチャすることなど眼中から消え失せ、一人の漢として定めた相手に勝とうとイクスは走り始めた。


「スランンン!!」


「うん? なんかうるさくない」「豚にお礼したいって言ったのはあんたでしょエーデ! なに話題変えようとしてのよクズ!」「あたしもなんかイクスの声が聞こえたような……」「なにを言ってるんだロロナ。懲罰房は音を消す魔法がかかっている。声など聞こえるわけないだろう。はあ、理解に苦しむ。頭にスライムが詰まってるとしか思えない」「まあまあヒビキさん。一応念のために寝る前に一度確認しに行きましょうか」


 イクスとヒロインたちの好感度が上がった。



  ────


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