第17話 仮面を脱がす豚野郎
「ああ、すまないね。君に会えたのがあまりにも光栄で浮き足だって自己紹介が遅れてしまった。私は聖騎士長を務めているファラス・フェイクだ」
この仰々しい肩書で何もなしは流石にエロゲでも許されないと思いますよ。
まあこいつは教皇の息子なので肩書がデカくなるのはしょうがないとは思うが。
それにしてもこいつの麾下の円卓の騎士とかいう騎士隊も全員戦闘前に不意打ちで殺されて一ミリも役に立たないのはいかんでしょ。
名前負けも甚だしすぎる。
というか絶対にその意味深そうな仮面いらんだろ。
脱いでくださいよ。
「世界を救うために日々ご尽力なさる聖騎士長に会えるとはこちらこそ光栄の至りです。デストン侯爵家の嫡男のスラン・デストンと申します。よろしければ仮面を脱いで頂いてもよろしいでしょうか?」
「仮面の中が気になるかね」
渋るかと思うと徐に仮面を脱ぎ始めた。
どんなおっさん面が飛び出すのかと思うと下顎の部分まで上げて、仮面の下から魔石のようなものが見えると降ろした。
「これ以上は見苦しいので勘弁してくれ。この仮面を付けずにいると持病の魔石化が進行してしまってね。失礼だとはわかっているが仮面をつけたままでいいかな」
「無論、そういう理由があるのならば強要する理由がありません」
「ありがとう」
はえー、なんで戦わんし、仮面つけているかと思ったら病気か。
確かに理屈は通るな。
なんか先ほどから勘が疼いて嘘だ、敵だと語りかけてくるような気がするが。
勘というよりこの存在感の強さは豚野郎の存在を疑わずにはいられない。
こいつは一体爆殺未遂直後から何なんだというのか。
まさか某未来の不動産王のチンピラみたく、悪党だから匂いをかけば同じ悪人かどうかわかるとでもいうのか。
言うて豚野郎の意思などこの仮面のおっさんよりもよっぽど胡散臭い上に悪意に塗れてそうだしな。
ひとまず無視しておこう。
「君の懐の深さには恐れ入る。やはり人格的にも能力的にも君は救世主と聖女を支えるのに必要なようだ。君さえ良ければ聖騎士隊に入ってもらいたいんだか?」
「お断りします」
流れるように勧誘してきたのですかさず拒否する。
教会はヤバい所なので嫌です。
しかも主人公パーティーに豚野郎が同道するとか諍いがひっきりなしに起きそうだ。
主に主人公のイクス関連で。
豚野郎のことを目の敵にしてるからな。
そんなクソみたいな状況で激戦区に行って戦いたくはない。
「君がいれば万の人が救われるのだがね。だが意思なきものを戦わせるほど酷いこともない。もし気が向いて戦いたくなったらいつでも声をかけてくれ」
割とあっさりと諦めてくれたな。
まあこの空気仮面がそんな活力に溢れるキャラだったら、空気で終わることはないので当たり前と言えば当たり前だが。
「聖騎士長でもダメですか。聖騎士長ならもしくは思ったのですが。先日の件であなたの不信を招いて、さらに意固地にしてしまったようですね」
ローゼリンデが悩ましげな顔してそう呟く。
先日の件ってあれか。
村を救ったのを教会が自分の手柄にしたあれか。
教会ならやりそうだと思ったのでどうとも思っていないし、普通に見捨てる気だったしな。
そんなことよりも俺が気になるのは爆弾魔のことだけだ。
成り行きとはいえ、ちょうどいいし、聞いておくか。
こいつらがやってた場合は圧かけることにもなるし。
「今日は危うく爆殺されそうになった。爆弾魔がいないか、教会側でも調査してくれると助かるのだが」
「爆殺? そのようなことがこの学園で……。由々しき事態ですね。こちらでも調べる必要がありますね」
「なんと!? そんなことが!! 救世主の身に危険が生じればことだ。ローゼリンデの言う通りだろ。動ける聖騎士に触れを出して学園全域を隈なく調べることにしよう。すまないが、我々も魔族の戦いに人員を割かれていてこちらに割く余力は微々たるものしかない。君も協力してくれるかな?」
教会の人現場にいなかったとは言え、情報網がガバガバすぎませんかね。
結構な事態だと思ったんですけど。
おそらく何もないだろうが、空気仮面のわざとらしい驚き方が疑わしくて腹が立ちますね。
しかも協力頼んだ結果、言ってること余力ないから自力で頑張って下さいってどういうことですか。
救世主のがピンチの時だけめちゃくちゃ雑すぎるだろ。
まあイクスは体頑丈なんでゼロ距離爆破されても死なんとは思うが。
いかんな教会は元々怪しいのだがさらに怪しく思えてきた。
でもあの現場に聖女含めて聖騎士なんていなかったから白なんですよね。
「無論ですとも。では私はメイドを待たせているのでこれで」
それにどの道こいつらは聖女の護衛か、最前線に出張っているから手を出せるタイミングがほぼ皆無だからな。
無理矢理やるとしたら、誤魔化せるラインは一度がギリギリだろう。
何か情報を掴むまではノータッチが無難か。
とりあえず腹減ったし、晩飯食いに戻ろ。
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