第14話 犯人が誰か炙り出す豚野郎



 ブルーレアに焼き豚にされたせいでイライラマックスです。

 はてさてどなたがやったんでしょうか。

 豚野郎が恨みを買ってる人間は非常に多いからわかりませんね。

 生憎証拠があるかもしれなかった爆弾が仕込まれた訓練鎧は爆発四散したので手がかりもゼロになりましたし。

 このままでは「疑わしい奴がいっぱい? 全員処せば良くね」の由緒正しき将軍家伝来の処すルーレットを回してローラー作戦を決行するか、犯人が尻尾を出すまで待つかしなければいけない。

 イライラがでかいし、確実性が高いので処すルーレットにほぼ気持ちが流れているが、まだだめだ。

 まだ。

 冷静に考えればまだ犯人を炙り出すラストチャンスがまだ残っているのだ。

 大衆の面前での精神的揺さぶりをかけるというラストチャンスが。


 早く会場に行くか。

 人に散られて犯人がその場から消えても嫌ですし。

 トップスピードで『飛行』して、どよめいている会場に降り立つ。


『いや、鎧が突然調子が悪くなって爆発してしまい大変だった』


 初級風魔法の『強振動』を声を対象にして拡声して、犯人が動揺する言葉を発する。

 犯人ならば突然俺が会場のど真ん中に現れたこと、爆弾のことに勘付いているはずなのにこんな不自然なことを言ったことに対して動揺するはずだ。

 上級光魔法『光速化』で速度超強化のエンチャントをかけて、加速して幾分かゆっくりになった世界で会場の人間の反応を見ていく。

 この中で一番動揺している奴はどいつだ。

 ぐるりと様子をみるとびっくりしている奴はいるが、爆発だと知っているのになぜという感じで動揺しているような奴はいない。

 おのれ犯人は表情を周りに合わせて擬態をするのが得意かと思うと、目が不思議とヒロインの一人であるロロナのところで止まる。

 ルートをクリアしてるのでカジノなどのミニゲーム担当で戦闘はからっきしのただの一般人だと素性を知っているが、なぜか勘が囁いてくる。

 勘。

 それは人生で一番信頼してはいけないもの。

 信じたものは必ず地獄に落ちるとされる魔性。

 証拠──動揺もしていないというのに、素性も白だとわかっているのに、勘で攻略ヒロインに危害を加えるのはあまりにも危険すぎる。

 主人公やヒロインたちの怒りを買って破滅にいく可能性があるというのに、そんなあやふやなもので破滅に至ったとしたら死んでも死にきれない。

 だが俺の中のダークサイドがこの娘ならやりかねないと囁いてきている。

 この娘は俺側──クズ側の人間だと。

 頭ごなしに否定するごとに時間を割いてはいけない白であるロロナに意識が割かれていく。

 ロロナを要観察とする。

 それがこの心の警鐘を鎮める唯一の手段だろう。

 一応ボウズではあれなので、びっくりしている奴らを『処すリストブラックリスト』に顔で登録しておく。


『私はこの通りピンピンしている。鎧が爆発した件のことは誰にも非はないので心配しなくていい』


 これ以上揺さぶりをかけても無駄なので無事であることを適当に説明すると闘技会場から降りる。

 処すルーレットをこれから回して狩りに行くかと思うとヒロインたちこちらに近づいてくるのが見えた。


「スラン君、ごめん」


 何だと思うとヒロインの一人であるエーデがなぜか謝ってきた。


 ────


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