第9話 教会ぶっ壊して王国頂き系女子


「こちらこそお初にお目にかかります。シア王女殿下。デストン侯爵家嫡男スラン・デストンです。こうしてシア様とお目通りになれることは光栄の至りにございます」


「ふふふ、あなたとは姉弟のようなものなのですから。そう気構えなくてもいいのですよ。打ち解ける為にも早速ご飯にしましょうか」


 状況は状況ですが待ちにまった夕飯が来ました。

 お腹ぺこぺこだけどここで一番目上の人間──シアが音頭を取るか、食事に手を取るまでまたなければ手が付けられない。

 早よ食べましょうや。


「では私たちが今日出会えた運命に感謝を」


 はい、シアがロイヤルコップを掲げました。

 ゴーサインです。

 俺もロイヤルコップを掲げてロイヤル飯にゴーです。

 いやあ贅を尽くした感じがしていいですね。

 この机一面にこの人数では食べられないだけの色んな種類の料理が並んでいる光景。

 あっちで生きている間に見たことないですからね。

 さて漫画肉みたいなのから手をつけましょうか。

 そう思って、肉料理に手を伸ばすとロイヤルな軌道を手が描き始めた。

 何だこれはと思うと、目が勝手にチラチラとシアの方を見る。

 肉を見ている時にやめてください。

 視神経が千切れます。

 どうやら内なる豚野郎がシアに見惚れて、見栄を張るためにこちらの世界のテーブルマナーに沿って体を動かしているらしい。

 俺のなんちゃってテーブルマナーで食うよりはマシでしょうけど、シアをチラチラ見るのはまずいですよ。

 豚野郎パパ気づいて睨んでますし。

 同担拒否ですよこれは。

 体の主導権を戻したいですね。

 もっと目の前の漫画肉への欲を高めて、豚野郎の惚けを塗りつぶせばいけるか。

 お肉お肉お肉お肉お肉お肉。

 よし戻った。

 食欲を前に恋愛などという軟弱な感情は無力なものよ。

 手だけ戻ってないがこっちは都合はいいしこのままでいいか。

 何の肉かは不明ですが、美味しいですねえ。

 ジューシーな感じで実に俺好みです。


「お食事は口にあったみたいですね。よかったです」


「陛下、愚息にそのような気遣いは不要です」


「彼はどこからも渇望される力をお持ちですもの。あまり厳しくし過ぎると血が繋がっているとはいえ逃げられてしまいますよ」


「はは、このリックしかと胸に刻みました!」


「スラン。あなたはこの国の現状を知っていますか?」


 シアは豚野郎パパを即落ち二コマじみたスピードでわからせるとそう語りかけてきた。

 俺はシアについてはルートクリアしているので何が言いたいかはこれ以上言葉を重ねなくとも知ってる。

 この娘は教会が王国の一騎当千のめちゃ強鎧──精霊鎧を所有してるのはヤバくないですか? 魔族との争いが終わったら圧倒的武力で教会に国乗っ取られませんか? この王国に真の王が必要ではありませんか?と言いたいのである。

 すっとぼけて、すでにわかっていることを聞くのもかたるいので事前に懸念は抱いていたという体で話を進めるか。

 ここに呼び出された時点でほぼ教会ぶっ壊し隊──シア王女直属騎士隊キングスゲインに入ることは確定みたいなもんだしな。

 ちなみに主人公の場合はそれからいくらか仕事して好感度を上げたらシアから「私はこの王国の真の王となりたいのです」と大それた野望を告白されて、教会と一悶着とともにシアをメス堕ちさせ、国より俺を選べよするのがワンセットだ。


「ええ、教会に全ての精霊鎧を独占され、大変危うい状態です」


「噂とは違い聡明なようですね。ますます気に入りました。その通りです。ですから教会に対抗するための大きな力が必要です。あなたのような大きな力が。どうでしょう? あなたには全てが終わった後、私が真の王となった王国で相応の地位を用意します。私の元に来ませんか?」


 規定路線だがやはり教会ブッ壊して王国頂き系女子シアに軍門に入るように誘われた。

 てか何最初から野望を覆い隠さずに全部喋ってんねん。

 シア様ダダ漏れでございますよ。

 ダークサイドの人間だから闇を見せても共感するかもと思ってらっしゃいますかね。

 まあいいやここで断っても、ニコニコしながら暗殺者を差し向けられてバッドエンドだし、オケマルしとこう。


「無論、王国の真の王である陛下の剣となるためにここに馳せ参じた次第です。シア陛下に忠誠を捧げます」


「いい返事ですね。あなたの教育が行き届いているようですねリック。ご褒美に私の匂いの付いた花を与えましょう」


「ありがたき幸せ! 陛下のお香によって心があらわれるようであります!」


 俺が色のいい返事をするとシアが豚野郎パパに白いお花を投げて、受け取った豚野郎パパが美少女の匂いにブヒり始めた。

 豚野郎と非常に血の繋がりを感じますね。

 改めて思うとこんな覇王の兆しが見える人間をヒロインにしようと思った製作スタッフの気が知れませんね。


「早速ですがスラン。あなたには学園で教会から与えられる精霊鎧ごと救世主と聖女の奪取をお願いします。後に精霊鎧に比肩する性能を持つように設計された鎧を完成次第そちらに送ります。是非とも務めを果たす助けとして下さい」


「はは。陛下のご期待に応えるために必ず成功させて見せます」


「貴方が成功させれば目の上のたんこぶである教会を消すことも造作もなくなります。楽しみにしていますよ」


 割とメチャクチャな要求に俺が都合のいい返事をすると、シアは微笑を浮かべる。

 当たり前だが返事をしただけで主人公と因縁を生じさせるようなことはしない。

 俺がするのはポーズだけだ。

 「頑張ってるけど、なかなかいかんのですわこれが……」で駆け抜けようと思います。

 主人公たちは無茶苦茶な力を持っているのでその力の一端を収めた映像見せれば一発でこれは無理となると思いますしね。


   ────


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