第8話 いつ何時でもあなたの味方です



 夕刻になると学園に着いた。

 もうへとへとですよ。


「スラン様。ありがとうございます。あの連中から助けて頂いて」


「気にするな。お前を助けようとしたのではないからな。あいつらが勝手に突っかかて来て自滅しただけだ」


「でも私のために生身で鎧を相手に……」


「くどい。そうしないと俺がやられるからやっただけだ。下らんことを気にせずに労を癒せ」


「スラン様がどう言おうと私には今日のことは消えない恩です。これから私はいつ何時でもあなたの味方です」


 女子寮の近くで下ろすと感極まったモブ女生徒がそう言うだけ言って帰っていた。

 モブの癖にネームドになってもおかしくないくらい義理堅い娘だな。

 俺が回収してないだけでサブクエストでネームドで出ていたかも知れない。


「貴様もここまででいいぞ。これから先は馬車では進めんしな。今日一日ご苦労だった」


「いえ、侯爵様には良くして頂きこちらこそ感謝致します。とても幸せでした。次の機会も是非とも私の馬車に乗って頂ければ幸いです」


「ふん。では貴様をこのデストンの豚の専属馭者にさせてもらおうか」


「ありがたき幸せです」


 冗談で言ったつもりだが馭者のおっさんは快く受け入れてしまった。

 まあ馭者とか呼ぶ時には迷う手間もなさそうだし、手っ取り早くていいか。

 馭者のおっさんにそこそこヤバめな目にあった迷惑料をプラスした報酬を払うと、「こ、こんなに!」と驚いて何度も頭を下げながら去っていた。

 確かゲームでは一回で銀貨十枚くらいだった気がするが、ここでは経済状況とか異なったりするのだろうか。

 まあいいか、金は腐るほど持ってるし。

 普通に使ってれば無くなることはないだろう。


 さて寮まであと少しだ。

 戻ったらうまい飯を食って、風呂入って寝よう。


 全てが終わり、軽やかな足取りで寮に向かうと身なりのいいロイヤルな中年と屈強な騎士たちがが寮の門の前にいるのが目に入った。

 あれは確か、豚野郎のパパ──リック・デストンだ。

 乱暴狼藉を働く豚野郎に一言言いにきたのだろうか。

 これからお説教タイムはきついですよ。

 二十代の陽キャしか耐えられようなジェットコースターみたいな一日だったんですから。


「来たか。スラン」


「父上、一体どうされたのですか?」


「実は教会が聖女の覚醒で魔王軍に急襲された村を救ったとくだらんことを抜かしておってな。何か知らんか?」


 まだ数時間しか経過してないはずだが、もう情報が行き渡っていたのか。

 しかも捏造する形で。

 そっちの方が波風が立たないので個人的にはいいのだが、様子を見る限り豚野郎パパは不服のようだ。

 というよりも聞き方からしてもう何か掴んでるだろう。

 昼ドラとかの不倫された妻が夫に聞く感じと同じだもの。


「あそこで何か起きたか知っていると思ってよろしいですか?」


「それでいい。教会──王国の寄生虫どもから陛下に報告があったと聞いて怪しく思って村に行けば、村人どもはお前の名を出して二つの鎧のレコードを差し出してきた。全て見たところ、国のエースを超えるような戦いぶりに、伝説上の魔法を繰り出すまさに夢幻のような光景が見えた。これをお前が成したと言うのは本当か?」


「本当だとしたらどうなのです」


「陛下の元にお前を連れてくことになる」


 豚野郎パパがそういうと屈強な騎士たちに周りを囲み始めた。

 何ですか、これは。

 集団物ホモビの導入か何かですか。

 陛下って王様ってことでしょ。

 お偉いさんとサシ飲みなんて万年平にはきついですよ。

 まあパパと揉めてもデメリットしかないので行きますけど。


「行くしかないようですね。シルヴィア、今日はもう暇を出す。羽根を伸ばせ。明日の朝に戻らなければ明日も自由にしていい」


「……ご、ご主人様。……はい」


 このまま行くとシルヴィアが豚野郎どっか行ったけど仕事どうすりゃええねんとなりそうなので、指示を出しておく。

 心配そうな顔です。

 あざといですね。

 豚野郎には忠誠心ゼロだと思うんですが、すごく主人を心配している家来感がでています。

 計算高い子は嫌いじゃありません。

 いいもん見れて若干気力も回復した気がするし、行くか。



 ──


 むさ苦しい騎士たちと馬車でパカラパカラと移動すると王城に到着した。

 学園が王都内にあるので、一時間もかかっていない。

 中々アクセスがいい。

 しかしそれはそれとして、そろそろ夕飯どきですよ豚野郎パパ。

 お腹空きました。

 食欲の化身である豚野郎にとっては死活問題です。


「何だこっちを見て」


「いえ、ちょうど夕食の時間なので陛下の都合はよろしいのかと思いまして」


「近衛騎士たちに遮られなかったのなら問題はあるまい。夕食を抜くくらいこの激動の時代を生きるものにとって日常茶飯事よ。例え飯を食わずとも陛下も気にしてはいまい」


 それはノンデリですよ、パパ。

 俺はどんだけ忙しい時でもご飯はしっかり食べますから。

 陛下だって本当は食べたいけど同調圧力で我慢してるかも知れないじゃないですか。

 俺が内心であかんでしょと思っていると、雰囲気たっぷりの老執事が出迎えにきた。


「パトリック様、スラン様ようこそおいで下さいました。お嬢様が食事を用意して待っておられます」


 お嬢様?

 あれ国王はおじじだったはずだが。

 陛下は国王だと思っていたが王女様か。

 数多くいるうち王女様なんてガチャガチャ引くようなもんなもんなのに、よく肩入れするな。

 豚野郎パパギャンブラー説が浮上すると、陛下こと王女様の元に到着する。


「パトリックよく連れてきてくれました。今日中に連れてきてくれるとは思いもよりませんでした。迅速な対応に感謝します。あなたがスランですか。初めまして、第二王女シア・スタインです」


 金髪碧眼のいかにも王女王女しているシアが自己紹介してきた。

 サブヒロインの娘だ。

 教会アンチでメインヒロインが干渉するよりも前に教会と対立する道を選ぶとルートが開ける。

 この娘、豚野郎パパ抱き込んでたんだな。

 本編では豚野郎パパと関わりがあるようなエピソードなかったから知らんかったな。

 これは強制的に教会ぶっ壊したい隊に組み込みですかね。


   ────


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