第5話 宗教勧誘されてワロタ



 聖女の誘いは断る。

 別にローゼリンデが嫌だからと言うわけではない。

 この娘は登場人物で言えばメインヒロインを張るだけはあり、性格はいい方だ。

 何が嫌かというと、所属している教会ことスコア教という団体が嫌なのだ。

 割と外れる預言を信望している団体で、外れるというのに預言を実現するために現実を捻じ曲げようとして色々とヤバいことをやらかしているため非常に凶悪な団体なのだ。

 しかもラスボスが暴走する一旦も担うというおまけ付きで悪い意味でこのエロゲのMVPと言っても過言ではない。

 運営している教会上層部もスコア教の運営で得た自分たちの権益を守ることに固執するクズどもでプレイヤーならスコア教を好きになる要素も一つもない。

 いつも思うけどゲームに登場する宗教や教会って漏れなくクソなのは何なんだ。


「お待ち下さい! まだ話は終わっていません!」


 魔力がほぼゼロで魔法で体の動きを補助できないのでエイコラヨイコラと重い過積載ボディを地道に引きずって馬車に戻っていくとローゼリンデに腕を引っ張られる。

 あともうちょっとだったのにやめてくださいよ。

 なんの補助もなしにこの体動かすの大変なんですから。


「終わった。貴様らと同道するつもりはない。そんなどうでもいいことよりも早く民に救いの手を伸ばさんか」


「あなたさえ手に入れば、百いや千の村を救えます。それだというの一つの壊れかけの村に執着する意味がありません」


 いかんパワーで押し負けている。

 体が強制的にあちら側に持ってかれる。

 このままでは教会にドナドナされてしまう。


「ご主人様をついていくなど言っていません! 離してください!」


 俺が冷や汗を流していると馬車から意外なことにシルヴィアが出てきて引き留めてくれる。

 でかしたシルヴィア!


「そっちが離しなさい!」


「離しません!」


 美少女二人に両手を引かれる豚野郎。

 嬉しいより痛いの方が強いですね。


「あのすいません。村を助けて頂きありがとうございます」


 どうにもならんなこれはと思っていると、見知らぬ声が聞こえた。

 見ると煤で顔を真っ黒にした老人だった。

 村が燃えていたことを考えると村人か。

 二人の拘束が緩んだので脱出する。


「あなた様が鎧の目を引いて頂いたおかげで村人は怪我をするだけで済み、家屋の被害も五棟ほど。鎧に襲撃されて全滅を覚悟していただけに本当に何とお礼を言ったらいいか」


「礼などいらん。傷ついたお前から貰っても大したものにならんからな」


「確かにそうですが。ならばせめてお名前だけでも教えてくだされ」


 礼については保身のためにやったことなのでいらないのだが、村人は引き下がらずに名前を尋ねてくる。

 どうやら絶望的状況で助けてもらい感無量になっているようだ。

 熱が冷めるまでしばらくかかるし、要求には応えておくか。

 名を聞いたら失望すると思うが。


「スライ・デストンだ」


「……スライ・デストン様。本当ですかな? 噂に聞いたスライ様とは今回のことはとても似つかぬと思うのですが」


「噂は本当だ。デストンの豚に助けられたなど恥にしかならん。今回のことは忘れることだな」


「例えあなた様が本当だと言おうと民のために戦った姿と噂は一切一致しませぬ。わしは噂など信じません。スライ様がこの村をお救いしてくださったことは語り継いでいきたいと思います」


「好きにしろ。それよりも聖女様が貴様らの村の復興に一役買ってくれるそうだ」


 先ほど村を見捨てる宣言したローゼリンデに水を向けるとギョッとした顔でこっちを見てくる。

 闖入者が来たからといって油断しましたね。

 俺はクズなので不意打ちだろうが、何だろうが相手に有効打が入る環境になったら全力でぶっ叩きにいきます。

 慈善活動に来た聖女様がここで断るとまずいですよね。


「そのようなこと……」


「聖女様」


 ローゼリンデが食い下がろうとすると歳を食った聖騎士──おそらく聖騎士長が耳打ちする。

 今の状況の不味さを伝えているのだろう。

 先ほどは村は全滅する前提で聖女が見捨てたという醜聞がは広まらない状態だったし、聖女を守らなければならないということで見捨てることを言い訳できる状況だったが、今は村人は生きていることで醜聞が広まる状態で、危険は全て排除されたために聖女を守るためという言い訳も使えない状況だ。

 しかも敵対している公爵側の俺がいるのだからそんな現場も見られるのは教会側は避けたいはずだ。


「わかりました。村に案内なさい」


「へえ」


 聖騎士長に説かれて冷静になったのか、口惜しい顔をしつつも村の方に向けて歩き始めた。

 よし刺さりました。

 帰ってこないうちにささっとここから離脱しましょう。

 それにしてもシルヴィアには助けられたな。

 流石に何か褒美をあげるか。


「シルヴィア先ほどは助かった。好きな望みを何でも言ってくれ。可能範囲で実現しよう」


「私の望みはご主人様にそのままであってもらえれば十分です」


 そのままってこんなんでいいですかね。

 そんなわけないよな。

 まあヘイコラしてくれたのでお給金に俺のポケットマネーでも追加しとくか。


   ────


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