第4話 仲間にしなきゃ(使命感)
「聖女様、こちらです」
「くっ」
聖女ローゼリンデは先ほど激励した民を見捨てて、逃走していた。
自分の代わりは効かず、受けいれねばならない現実だということはわかっていたが忸怩たる思いを抱かずにいられなかった。
「くそ! どうしていきなり国内に現れた! いつもは国境付近だろ!」
「学園に鎧がある! 鎧を確保したら我らだけでも村を救いに戻るべきだろう!」
「よく見ろ! あの見たことのない新型四体は並の魔王軍とは動きが違う! 無駄に落とされて被害を広げるだけだ!」
「貴様ら我らの本分を忘れたか! 我らの本分は聖女様をお守りすること! 決して個人的な感情で戦うことではないわ!」
聖騎士に連れられ学園に向けて逃げる。
その途中で馬車と遭遇した。
なぜこんな場所に馬車が?と思うと窓際に居た同級生のスラン・デストンと目が合った。
その目は憂いを帯びた目だった。
いつもは欲望が前面に押し出されたような顔している故に困惑する。
自分の知っているスランとはまるで別人だった。
本来の彼であれば、逃げる自分を笑い、村が襲撃されているのを面白い余興だといい顔を喜悦に歪めているはずだというのにそれとは真反対だ。
「なんということだ! 民たちが傷ついている! 今こそは王国貴族としての誇りを示す時! 行くぞおおおお!」
「ご、ご主人様!?」
信じられないことにスランは馬車から出ると鎧に蹂躙された村に生身で単身突撃していた。
自分の目を疑った。
周囲の生徒に横暴狼藉を働く、あのスランが絶対にしないことだ。
謎が謎を呼ぶ。
「正気か?」
「貴族の義務がある上に、公爵から疎まれているからな。始末されないためにはあれ以外に選択肢はなかったのだろう」
「デストンの豚だぞ。欲を満たすことしか頭にないともっぱらの噂だ。そんな事を考えられる脳が本当にあるのか」
「馬を止めてグチャグチャ言うだけの価値のある話か! ささっと──」
「おい何だよ、あれ」
スランの行動に驚愕して馬を止めて話し始めた聖騎士に聖騎士団長が檄を飛ばすがその途中で爆発音が響きその声は遮られた。
見ると四機の魔王軍の新型鎧が全て倒されていた。
何が起きたのかわからない。
スランが動かした鎧の動きがあまりにも速いせいでその場にいる全員が視認できていなかったのだ。
ただそこにいる一同にわかるのはその不可思議な現象がスランが現場に急行した後に起こったことだけだ。
「おい倒した内の一体が動き出したぞ!」
「デストンの豚が乗ってやがる!」
ハッチが壊れてコックピットが丸見えになっていることによりスランが乗っていることを確認して驚くと、さらに信じられないことが起こった。
王族の中でも魔法を極めたものしか使えないとされる半ば伝説とされる極大魔法が発動されたのだ。
「馬鹿な! 何だあの馬鹿げた魔法は! 伝説の極大魔法とでも言うのか!」
「あれは本当にデストンの豚か!」
驚愕の声を上げて、皆が釘付けをされる中で誰も存在に気づけなかった戦艦が落とされた。
あまりの光景に聖騎士団員達はもはや声も上げられなくなっていた。
あれは神話の領域の御技だと直感で感じて放心してしまっていた。
おそらくスランがこれを成していることを知らなければ、神の仕業だと信じていただろう。
「預言に記されてない救世主でも聖女でもないものがあのようなこと」
聖騎士が放心するのと同時に不思議とローゼリンデの口からもそんな言葉が漏れていた。
それほどに彼女の奉じるスコア教が信じてやまない預言によって保証されていない者がこれほどの力を持っていることが驚愕だった。
なぜ保証されていない者がこれほど強く、保証されている自分がこれほどまでに弱いのかと嘆かずにいられないほどの理不尽だった。
今の彼女の目には唾棄されるべき存在とされているスランがもはや自分よりも価値のある存在に見えてしょうがない。
奇しくも彼女の望む救世主像である強く優しい存在を民のために力を使う現在のスランがなぞっていることも彼女の評価に加点を与えていた。
現在の彼女の中でのスランの存在は映画版ジャイアンと同レベルの頼もしい存在に変わっていた。
「敵は下した。あとは貴様らでどうにかしろ」
全てを終えたスランが鎧に乗って降りてくる。
周りには先ほどの極大魔法の金色のオーラがかすかに舞っている。
オーラの残滓が清浄な存在であると証明しているようだった。
ローゼリンデは使命を感じた。
この預言にない途方のない力を持った男を手に入れねばならないという使命を。
「スラン様、私とともについて来てください」
「断る」
使命に基づいてローゼリンデが同行するように要求するとスランは事も無げに断った。
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