黒の存在
3-1
目が覚めるとそこは宿屋だった。
俺は…そうだ、Aランクモンスターを討伐してそれから気を失ったんだ。
起き上がろうとすると体全体が痛い。
なんとか体を起こしてベットから降りる。
「リンとキルは…」
一階におりて宿主に声をかけた。
「俺と一緒に泊まっていた女性と従獣は外に出ましたか?」
「おぉ!われらがヒーロー!お目覚めですか!」
「…え?」
この世界でヒーローと呼ばれたのは初めてだった。
だってこの世界にはヒーローって言葉は存在しないことは知っている。
だが、この主人ははっきりとヒーローと言ったのだ。
「主人、今ヒーローって…」
「あぁ、ギルド長や冒険者が騒いでたよ。カイ・ノバークさんって冒険者の職業はヒーローでこの町のピンチを救ってくれたのはあんただって。」
***
外に出るとおkの街に来た時と同じようににぎやかな街だった。
ギルドに向かって歩いてるとみんな笑って過ごしていた。
俺、この人たちの笑顔を守ることで来たんだ…
ギルドに着くとそこは宴のように騒いでいた。
「おい、あれカイじゃね?」
「え?あの若造が?」
「この街のヒーローだぜ!?マジすげぇ…」
俺のことだろうか…ちらほらと聞こえてくる…
「受付嬢、あの…」
「カイ様!?お目覚めになられたんですね!昨日は1日起きなかったと朝、リン様からお聞きしましたよ!?」
「え、俺1日寝てた?」
「えぇ、一昨日のフタガオ討伐後に倒れてその後宿屋に運ばれてずっと起きないってリン様が…」
「そうだ!リンは!?どこ行ったか知りませんか!?」
「リン様なら奥でギルド長とお話ししてますよ。」
ギルド長と?いったい何の話をしてるんだ?
もしかしてリンの故郷の村のこととかだろうか?
「俺も行っていいだろうか?」
「え?えぇ、大丈夫だと思いますが…ちょっと聞いてみましょうか。」
そして俺たちはギルド長室へ向かった。
こんなにギルド長室って遠かったか?
体の疲労で歩くのさえもつらいなんて…
「ギルド長様、カイ様がお見えになられてます。」
「カイ!?起きたの!?」
中からリンの声がする。
そしてドアが勢いよく開く。
目の前にリンの顔が…
と次の瞬間、リンは飛びついてきた。
「カイ!本当によかった!もう起きないのかと思ったわ!」
「イダダ…リン、よかった。元気そうで。」
「カイ、おぬしはこの町の恩人…ヒーローじゃな!」
「ヒーロー…そうだよ!ギルド長がこの町のみんなに言ったのか!?」
「うむ、危険度Aランク魔物を2人と一匹で4体も討伐したんじゃ。後でお礼をさせてくれ。」
「いやいや、俺はただ…」
そう、ただ何とかしないとって思って…
気が付けば南門に向かって討伐にかかって…
ほんと、ただそれだけのことなのに…
「カイ!私たちやってやったのよ!なりたいんでしょ!みんなの笑顔を守ることができるヒーローに!?」
「…あぁ、そうだ。俺はヒーローになりたいんだ。やったんだ、この街の危機を救えたんだよな!?」
「そうよ!一歩前進よ!」
俺たちはテンションが上がりともに喜んだ。
これが俺たちの最初の旅の記録となった。
***
「カイ・ノバーク?邪魔しやがって…Aランクの魔物5体も用意したのにぜんぶ討伐されるしよ。」
「私のキメラもやられちゃったよ…お気に入りの子だったのになぁ。」
「だから言ったのです。同時に攻めたほうがいいと…」
「まぁ、いいさ。これはほんの序章だ。まずはカイ・ノバーク、やつを倒すぞ。」
「おうけい。」
「わかりました。」
「やるぞ、あのお方のために…」
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