2-17

俺たちはアイアンゴーレムを倒した後、南門方面にいる最後のAランクモンスター、ギガントドラゴンを討伐していた。


「これでトドメ!」


ウォーターボール


リンが特大のウォーターボールを撃ち放った。

ギガントドラゴンに命中し、息絶えた。

討伐成功だ。


「これで南門方面は全部だ…」


俺もリンもキルも疲れが出ている。

リンに関してはこれがちゃんとした始めての戦闘なのにここまでやれるなんて。


「リン!とりあえず南門に戻ろう!」


「えぇ、これって魔力の使い過ぎなのかしら?頭が少しふらふらするわ…」


さっきまでなれない魔法を…しかも特大サイズで連発し続けていたのだ。

いくら魔力が多くても枯渇するだろう。


「リン、きっと魔力がほとんど残ってないんだ。…キル、リンを乗せて街に戻ることはできるか?」


「…ガゥ」


キルも戦闘で囮役やリンの護衛に徹してくれていた。

疲れているんだろう。

リンをのせる元気もなさそうだ。


「リン、俺の背中にのって!」


俺はそう言いながら変身を解いた。

リンは顔を真っ赤にして


「な!なによ!別に一人で歩けるんだから!」


そういって一歩踏み出そうとするとふらつきこけそうになる。


瞬歩


俺は一瞬でリンの前にいきリンを支える。

するとさっきよりさらにリンの顔は真っ赤になった。


「大丈夫か?」


「…ごめん、やっぱり無理。背中、のせて…」


リンは素直になり俺の背中にのって帰ることを決めてくれた。

リンはゆっくり俺の背中に乗る。

…あれ?


「何?…もしかしてお、重い?」


「いや、その逆だよ。軽すぎてびっくりして…」


お互い少し照れてしまう。

女の子を背負うなんて経験ないし、すこし戸惑ってしまう。


「行くよ…」


「うん…」


***


南門まで戻ってくるとさっきギガンテス戦であった冒険者が駆け寄ってきた。


「あれ?さっきの嬢ちゃんとキラーキャットの従獣じゅうじゅう…ってことはあんたがカイさん?」


「あぁ、俺がカイだ。」


「え!?さっきまでの装備は!?それにこんなに若いなんて!?」


大声で叫ばれた。

すると周りにいた冒険者たちがこちらに注目する。


「亜人の嬢ちゃんに従獣、さっきの人たちだ!」

「ってことは仮面をかぶってたのはあの若造なのか!?」


多くの人がこっちを見ている。

するとリンがすこしバタつき始めた。


「カイ!おろして!みんな見てるから恥ずかしい!」


おっとリンをおろすのを忘れていた。

俺はリンをそっとおろした。


「おい、兄ちゃん。さっきのマスクをかぶってたのは兄ちゃんかい?」


「あぁ、その通りだ。」


このままではいろんな人に聞かれて面倒になりそうだったので俺は心を決めた。

見張り台に上り


「みんな!聞いてくれ!南門側の魔物は俺たちが全部倒した!」


南門に集まっていた全冒険者がこっちに注目する。


「俺の名前はカイ!カイ・ノバーク!職業はヒーロー!聞きなじみがない職業だろうがヒーローとは強くて優しいやつのことだ!」


みんながざわめきだしている。

ちらほら聞こえてくる声には


「ノバーク…あの伝説の格闘家、アレク・ノバークの血縁者か?」

「ヒーロー?強くて優しい?勇者みたいなもんか?」

「でも勇者の中には心のないひどい勇者もいるわ!」


「俺は今から北門の応援に向かう!余裕のあるもの、回復、休憩が終わったものは北門に来てくれ!」


そして俺はリンのもとへ戻る。


「カイ、言ってよかったの?」


「あぁ、わかってほしいってこともあったから…」


リンは少しうつむいたがすぐに顔をあげて


「それでこそカイね!さぁ、北門へ行きましょ!」


「いや、リンとキルはここに残ってくれ。リンは魔力が少なくなってるし、キルも疲れが相当たまっている。北門には俺だけで向かう。なに、大丈夫さ。ちゃんと帰ってくる。」


「…わかったわ。絶対に帰ってきてね。」


「あぁ、約束だ。」


俺はリンと握手して北門にむかって走り出した。

北門の状況が分からない。

もし食い止められてなかったら…

いや、マイナスな考えはよくない。

とりあえず今は走らないと!

俺はさらに加速して北門に向かうのであった。

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