ヒーローへの道
新しい道へ
2ー1
異世界へ転生してから16年たった。
俺はだいぶ身長も伸び、程よい体格になった。
「キル!」
キルもだいぶ大きくなりライオンサイズになった。
出会った頃は猫みたいなサイズだったのに…
「こい!」
最近ではキルとともに特訓するようになった。
特訓といってもキルは遊び感覚で俺にとびかかってくるのをよけるだけだが。
あれから町にも大きな事件は無く平和だ。
父さんとカリアさんが話し合って町に警備兵を配置する様になったりと
「…キル。大きくなりすぎだよ。」
俺が寝転がると頭元にキルが寄ってくる。
6年前は膝にも乗ることができるくらいだったのに今では俺が乗れるくらいだ。
「さて、そろそろ父さんたちも許してくれるかな?」
俺はノインさんに言われてからずっと外の世界が気になっていた。
でも父さんも母さんも外の世界はもう少し大きくなってからと言うからずっと我慢していた。
「みんなを助けるヒーローか…」
「ガウ…」
またヒーローになりたいから異世界転生したのに何にもしていない。
毎日特訓だけして。
そもそもこの世界にヒーローという言葉がない。
…俺がこの世界にヒーローという言葉を広めよう。
***
夜、ご飯を食べるために俺は席に着いたが
「父さん、母さん、俺そろそろ…」
父さんも母さんも俺が何を言うかわかっていたのだろう。
父さんはゆっくる口を開いた。
「しっかり準備してから行くんだぞ。俺が鍛えたとはいえこの世界は広いからな。」
母さんは何も言わずただうなずいているだけだった。
「父さん、母さん…」
「出発はいつの予定だ?」
「一週間後にしようと思ってる。町のみんなにも声をかけてから行きたいしさ。」
「そっか、強くなれよ。」
「さぁ!食べましょ!暖かいスープが冷めちゃうわ!」
母さんは明るく言ってくれたがどこか寂しそうな表情を浮かべた。
その夜俺は母さんに呼ばれてリビングで二人きりになった。
「カイ、これ。」
そう言って母さんが出したのは大金が入った袋。
「母さん…これ…」
「あなたのために父さんとずっとためていたの。あなたがどんな将来を望んでも応援出来る様にって。それに私たちの息子だもん、冒険に出たいって気っというと思ってね。」
「母さん…ありがとう…」
「寂しくなるわ。あなたは私たちのたった一人の息子。優しくて強い子よ。」
俺の目から水滴が落ちてきた。
泣いてなんかない。だってヒーローは強いんだもん。
だからこれは汗だ。
母さんは俺の体をそっと抱きしめてくれた。
こんなにうれしい気持ちになったのは久しぶりだ。
でも同時に寂しい気持ちでもある。
定期的にここへ帰ってこよう。
父さんと母さんが大好きだから。
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