1-10
「はぁ、ねむ…」
昨日は夜遅くまでみんなの話を聞いていた。
いろいろな話が聞けたがとても眠い…
「おはよう、カイ。もう昼近くよ。」
「おはよう母さん、父さんたちは?」
「外でイヤリングのことを調べてるわよ。」
「え!?どうして起こしてくれなかったの!」
「あまりにも気持ちよさそうにぐっすり眠ってたものだから起こすの悪いなって。」
俺はすぐにドアを開け父さんたちのとこへ向かった。
父さんたちは家から100mくらい離れたところでイヤリングを中心に話をしていた。
「おはよう、カイ。なんだ?パジャマのままじゃないか。」
「おはよう!だって急いで出てきたから…」
「おはよう、カイ君。すまないね、イヤリングの方はだいたい終わってしまったよ。」
「おはようございます。そうですか…どうでしたか?」
「魔物使役魔法が付与されてあったわ。でも違和感のある魔法でね、普通の使役魔法よりもっと強力で禍々しい魔法よ。」
レニーさんは魔法のエキスパートらしい。
なんでもほとんどの魔法が使えるとか…
「禍々しい…」
たしかにキラーキャットと対峙したとき異常じゃないほど殺気立っていた。
てっきり子どもがいないからそうなのかと思っていたがイヤリングが原因だったなんて…
「たぶん禁術よ。普通の魔法を暴走させるね…」
***
その夜ご飯を食べながら今後のことについてみんなで話し合った。
「俺とレニーはそのイヤリング…禁術について調べる旅に出ようと思っている。」
「あぁ、俺たちはここを離れることが難しい。だからまかせっきりになってしまうな。すまない。」
「いいんだ、このことは俺たちに任せてくれ。」
母さんが作ってくれたおいしいご飯をみんなで囲みながら食べた。
今日の様な日はきっとめったに来ないだろう。
ご飯を食べ終え、俺は外に出て星を眺めていた。
「となり、失礼するよ。」
ノインさんが俺の隣で寝っ転がった。
「ノインさんは異世界召喚って言ってましたよね。どういう感じでこっちの世界来たんですか?それに前の世界では…」
「俺はね、小さいころから特撮物やアクションが好きだったんだ。でも体が弱くてね、左腕は動かないし、ろくに歩きもできない。16歳の時までずっとベットの上だった。でもある日いつも通り目を覚ましたらそこは知らない天井だったんだ。」
「目を覚ましたらいきなり異世界だったんですか?」
「あぁ、それで動かないはずの左手は動くし、力が入りにくかった脚は力が入り起き上がれたんだ。一人でも歩ける。すごく感動したよ。でもそれもつかの間…目が覚めた場所は王様が支配しているようなひどい王国だった。」
俺が思っている以上にきっとひどい国なんだろう。
暗くてはっきりとは見えなかったがノインさんは眉間にしわを寄せすごく怒っている様だった。
「その王国で僕はいろんな実験をされてね、そこでいろんな魔法を強制的に覚えさせられたり攻撃魔法をくらわされて耐性をつけられたり…」
「ひどい…」
「ある時新人の見張りが俺の部屋の中で寝だしてね、その時剣を奪って逃げだしたんだ。人生で走ったのはあれが初めてだったよ。」
「そのあとは…どうだったんですか?」
「街を目指してひたすら走ったよ。途中で魔物に出くわしたりしたけど剣と魔法で倒したりしてね。たどり着いた街で保護されて冒険者を目指したんだ。そこでレニーに知り合ってって感じかな。」
「すごいですね、今では勇者と呼ばれて…」
「カイ君、きみもいつか旅に出てみるといい。この世界は僕が思っている以上にすごく広いんだ。まだ僕は半分も周りきっていないと思う。それに現世ではありえないことがここでは普通に起こる。」
「旅ですか…」
確かに俺はこの十年間この町、この家で過ごしてきた。
外の世界を知らない。
知りたい、この世界の事、そしてキラーキャット一家…アグル、ミノンをあんな風にしたやつを許さない!
「いつかまた旅の途中で出会えるといいね。」
ノインさんとの出会いが俺を外へ行きたいと思うようにさせてくれた。
いつか旅に出る日を心待ちにして俺はノインさんと握手した。
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