1-3
「カイ‼誕生日おめでとう!」
「早いなぁ、もう10歳か。」
あれからまた5年たった。
俺は10歳になり、身長もだいぶ伸びたし魔法も色々使えるようになった。
身体強化の魔法しか覚えることが出来ないのかと思ったら攻撃魔法と回復魔法も覚えることができた。
だが、攻撃魔法も回復魔法も最終進化はしない。
俺が使える魔法は身体強化以外初期段階でとどまる。
それも旧神さまに頼んだことだ。
『攻撃魔法で最強な魔法覚えれるとかもやめてくださいね。』
『なぜじゃ!爆発系魔法でどっかーんとかヒーローの演出にかかせんじゃろ!』
たしかに特撮アニメではピンチの時や最後の決め技で爆発させるシーンが多々ある。
だが、演出を自分で作るために最大級の爆発魔法なんて使えば辺り一帯が吹き飛んでしまう。
『僕はヒーローになりたいだけで魔王討伐の勇者になりたいわけではありません。』
『むむむ…仕方ないのう。なら最低限の魔法は覚えることはいいじゃろ?な?な?』
『その理由は?』
『爆発魔法でいつかヒーロー演出してほしいんじゃ!』
『まぁ、それは俺も憧れますし…』
『回復魔法も最低限覚える方がいいと思うんじゃ!』
『回復魔法こそヒーロー関係ないですよね?どちらかというとヒロインが回復させそうなイメージですが。』
『わしの憧れるヒーローは戦うことが出来てみんなのサポートにも回れる臨機応変なヒーローじゃ!』
『まぁ、あれば便利だし使うかわからないけどいいですよ。』
『よしっ!』
なぜ俺でなく旧神さまが喜ぶのか…
自分の理想のヒーローを作りたいんだろうな。うん。
「父さん!母さん!ありがとう!」
「格闘技術もだいぶついてきたしな。やはり俺の子だからか?筋がいいな。」
「身体強化の魔法だってほとんど覚えたのよ!私が教えることはほとんどないわ!」
まぁ、体の動かし方は前世の趣味が生きたし、魔法は旧神さまが色々おまけをつけてくれたから覚えるのがはやいのだろう。
「父さんと母さんが教えるの上手だからだよ!」
「…そうか?」
「あなた…」
なんだろう?二人が何か言いたいけど悩んでいる。
ここは子どもらしくらしく黙っておくべきか。
それとも聞くべきか…
…ええい!聞いてしまえ!気になるわ!
「どうしたの?僕の顔何かついてる?」
「…いや、何もついてないよ。それよりカイに言っておかないといけないことがあるんだ。」
「なに?」
「父さんと母さん、カイがこの町から離れて住んでいる理由さ。」
ほう、それは気になるな。
父さんと母さんと三人で街に買い物に行くときいつも町の人たちが話しかけてくれるし、優しくしてくれる。
けれどこんな町から少し離れた所に住んでいる理由。
「父さんと母さんは元々勇者パーティーの冒険者だったんだ。」
まぁ、それは薄々気づいていた。
父さんは普段大工や森の管理とか体力仕事をしているが休みの日には俺に格闘技術を教えてくれる。
それに一番分かりやすいのは寝室に飾ってある写真のようなものだ。
そこには若い父さんと母さん、それから男の人と女の人が写っていた。
みんな冒険者みたいな恰好で武器を持ってたりする。
なんなら一人だけめっちゃ勇者っぽいし。
だから正直それを言われても不思議ではなかった。
「それでね、私たちは魔王討伐の為に冒険してたの。」
「それで魔王の前にたどり着き戦いが始まった。だが私たちは討伐することが不可能と感じ、封印することにした。」
「無事に封印は成功したわ。それで多くの人が喜んでくれたの。でも…」
「父さんたちはな、封印しただけなんだ。だから魔物によって家族を失った人たちは魔王を討伐出来なかったことを疎まれてな。」
なるほど、なんとなくわかったぞ。
魔王を討伐出来なくてそれを恨んでる人たちがいるかもしれないということからこの人里離れたところで暮らしているのか。
「父さん、母さん。教えてくれてありがとう。でも僕は大丈夫!父さんと母さんに似て強いからさ!」
「カイ…」
10歳の誕生日。
家の秘密を知った。
でも俺はこの二人に隠していることがある。
いつか打ち明けないとな…
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます