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目が覚めるとそこはあたたかい場所だった。


だれかに抱かれてとても心地よい。


そうだ、俺、転生したんだった。


「とっても元気な男の子だ!」


「生まれてきてくれてありがとう。強い男の子になってほしいわ。」


この二人は俺の新しい両親。


父のアレク・ノバークはこの異世界では珍しい格闘家らしい。


母のミレアは身体強化に優れている援助魔法使い。


なんでも町の方ではすこし有名な夫婦らしい。


のんびり過ごしたいという理由でこの片田舎に引っ越してきたとか。


そんなノバーク家の長男として俺は生まれた。


なるほど、旧神さまも生まれ先をしっかり考えてくれているらしい。


「名前はどうする?」


「そうね、強く育ってほしいし、昔東の国で読んだ書物に書かれてたカイなんてどうかしら?」


「あぁ!君がすごくはまったあの話だね!いい!今日からこの子の名前はカイだ!」


カイ・ノバーク、これが俺の新しい名前か。


どういう因果かは知らないがまた俺の名前はカイが付くらしい。


現世でも海斗だったから友達にカイと呼ばれることもあったし、まぁ、違和感はないかな。


「この子にも流れているのかしら…」


「わからない、大きくなって時が来るまでは…」


何の話だ?


まぁ、今は赤子だし。


あまり気にしないでおこう。


***


俺が生まれて5年たった。


今日は俺の5歳の誕生日。


五歳にしては落ち着きがあり喋りも流暢だと言われるがそれは仕方ない。


そしてそろそろと思い俺は父、アレクにこう頼んだ。


「父さん、僕にも格闘教えてよ。」


「お?お前にはまだ早いんじゃないかなぁ?」


「基礎的なことでいいんだ。ちょっとでも父さんみたいにかっこよくなりたい!」


「…わかった、だが本当に基礎的なことだけだぞ?」


「ありがとう!」


そして次に俺は家の中でご飯を作っている母、ミレアの元へ向かった。


「ねぇねぇ、母さん!僕も身体強化魔法って使えるかな?」


「そうねぇ、勇者の子は五歳ごろから魔法をつかえたって聞くけど…」


「教えてよ!僕、母さんみたいになりたいんだ!」


「わかったわ、少しずつ練習していきましょうね。」


「うん!」


そして俺は家を飛び出る。


「カイ?また出かけるのか?」


「うん!夕方には帰ってくるね!」


父も母も俺が友達と遊ぶために出かけると思い込んでいる。


しかし俺が向かったのは木々が多い茂った林の中。


そこにポツンと空いた場所がある。


「よし、やるか。」


身体強化×2

拳攻撃力強化×2


おっと、これは何かって?


実は俺はもう身体強化の魔法が使える。


さらにこの×2ってのは旧神さまがつけたスキル。


俺が魔法を唱えるとき勝手に二倍になるらしい。


転生する前に俺が旧神さまにこう頼んだからだ。


『最強スキルてんこ盛りとかやめて下さいね。』


『なぜじゃ!俺最強とか男の子みんな好きじゃろ!』


『いや、俺は別にそこまで…』


『せっかく魔法効果5倍を用意しておったのに…』


『5倍は必要ないです。せめて2倍にして下さい。』


さすがに5倍は強すぎるだろ…


いや、2倍でも十分強いけど…


「そい!」


俺は用意しておいた丸太を真上に投げた。


挙式、3ノ型 昇波底しょうはてい


真上に向かって掌底を放つ。


それが衝撃波となり丸太に直撃すると丸太は粉々になり散った。


「ふぅ…」


これが俺がここ半年くらいでやっている練習だ。


ローカルヒーローで学んだ体の動かし方、技の決め方。


それらを身体強化の魔法と組み合わせて特訓している。


木こりが忘れていったであろう斧をひろってこのあたりを整地し、その時切った丸太で色々特訓している。


とまぁ、カイ・ノバーク 5歳。


今はひっそりと林の中で一人特訓してます。


いつかこの特訓が身を結びヒーローになれるといいんだが…

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