第133話 『神はいない』とはっきり理解した
いやいやいや、今これから話す内容が想像通りエリザベートとの婚約発表であったとしても、そしてそのエリザベートが俺の事を親の仇かのごとく射殺さんと睨んできていたとしても、確かにあの時俺は皇帝陛下と『エリザベートが嫌だと言うのであれば婚約の話は無効』という約束を交わした筈である。
そして、皇帝という立場の者が、それが例え口約束であったとしても一度交わした約束を破るなどまずない筈だ。
それに見て欲しい。エリザベートの俺を見る表情を。
まるで道端に落ちている犬の糞を見ているような表情をしているではないか。
そんな表情してくる相手が俺の事を好きな筈がない。
それどころか、どう考えてもマイナス評価であるとみて間違いないだろう。
誰が見ても俺がエリザベートから嫌われているという事が理解できる程なので、例えカイザル陛下が俺との婚約をエリザベートへ提示したとしても、エリザベートが俺の事を犬の糞レベルで嫌っている以上俺とエリザベートとの婚約は成立する筈がないのである。
そう言い切れる自信がるのだが、何故俺はこんなにも胸騒ぎがしているのだろうか……。
「今までなかなか目ぼしい相手が見つからなかったのだが、ついに我が娘エリザベートの婚約相手が見つかった事をここで報告しよう」
やはり予想通りにエリザベートの婚約発表で合っていたようで、その事をカイザル陛下が嬉しそうに告げるのだが、その『婚約』という言葉を聞いて俺は今にも昼に食べた物を吐きそうなくらいに気分が悪くなってくる。
そんな俺の事など周囲は気づく訳もなく(気付いたところで無視されて終わりなのだが)周囲にいる貴族たちは『おめでとうございます』と祝福ムードではないか。
誰があんな糞女の婚約が決まったくらいで喜ぶと言うんだよ。
むしろあんな、他人を見下して自分が全てであると言うような女(あくまでも想像)と結婚しなければならない男が可哀そうでしかない。
俺からしたら婚約というおめでたい話ではなく、一人の男性の公開処刑でしかない。
「…………ロベルト様、大丈夫ですか?」
そして俺の様子がおかしい事に気付いたオリヴィアが心配そうに話しかけてくる。
あれほど『俺を殺すかもしれない』と恐怖していた女子が、一周回って良い女に思えてくるのだから不思議である。
「そして、我が娘エリザベートの婚約者はそこにいるロベルトであるっ!!」
………………この時俺は『神はいない』とはっきり理解したよね。 もしいたのだ押したらどうしてこんな展開にしたのか小一時間問い詰めてやりたい気分である。
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