第132話 脂汗が止まらなくなる
しかしながら、逆に考えるとオリヴィアの中で何かそのような選択肢、本来であれば婚約破棄をしたいと思う程嫌いだった俺の側にいる事を選ぶだけの何かがあったのだろう。
その結果ゲーム内では見られなかった挙動をし始めたのであれば、死亡フラグもまた無くなった、または殺される可能性が低くなった可能性があるとも考えられる。
そう思えば、変わらないよりも変わっていく方が上振れする可能性が、俺視点では高いとも言えよう。
そもそもが寿命ではない何かで若いうちに死ぬという人生であるのだから、その死から別の何かに変わったのならなば、それら全てが俺視点では良い方向に転がった可能性が高い訳で、オリヴィアが俺に対する評価に何かしらの変化があったのだとすれば、そうなる可能性も高いわけで……。
そんな事を思いながら俺はこの現状を騙し騙しなんとか受け入れるように自分で自分を洗脳しようとしていたその時、皇帝陛下とその妻、第一皇子に第二皇子、そして皇女であるエリザベートが奥にある高台の場所に現れるではないか。
何故かエリザベートが俺の事を今にも殺しに来そうなほど睨みつけているのを見て、俺は胸騒ぎしかしない。というか、できる事ならば今すぐにでもこの場から逃げ出したい程には嫌な予感がしてならない。
いや、しかしあり得ない筈だ。
俺が今考えうる最悪なパターンなのだが、エリザベートが俺との婚約を受け入れる訳がなく、そしてエリザベート本人の意見を尊重し、俺との婚約が嫌だと言うのであれば俺とエリザベートとの婚約は無かった事にするよう、カイザル陛下ともあの時確かに話し合った末に合意した筈である。
であれば、俺のこの胸騒ぎは杞憂に終わる筈だ。
そして、皇帝陛下やその妻、子供達の姿を見た貴族たちは談笑をやめて皇帝陛下達に向かって頭を下げるので、俺もそれに倣って頭を下げるのだが、内心気が気ではない。
「よい、頭を上げてくれ。堅苦しいのは賞与式で十分だろう。今は帝国最大とも言える危機を乗り切れたこと素直に喜ぼうではないか。しかしながら、折角静かになったたこの場を借りて皆に報告したい」
周囲が静かになったところでカイザル陛下は、頭を下げている貴族たちに頭を上げるように言った後、エリザベートと一緒に一歩前に出ると、この場を借りて報告したいことがあると言うではなか。
その光景を見た貴族たちが『ついに婚約者が決まったのかっ?』と、ざわめき出し、俺は脂汗が止まらなくなる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます