第126話 はいそうですっ!!


 やはり自分の考えというものは『何も言わなくても分かってくれる』というのは傲慢な考えだろう。


 その事を改めて思い知らされる。


「むしろ逆にロレーヌ家の娘には嫌な思いをさせてしまいこちらが謝罪するべきだろう。その件については公爵家次期当主である以上形に残る謝罪はできない為口頭で申し訳ないが謝罪させてもらおう」

「い、いけませんっ!! ロベルト様っ!! 頭を上げてくださいっ!!」


 そして今度は俺が頭を下げるとオリヴィアの父親が顔を真っ青にして、俺に顔を上げるように言ってくる。


 流石にここまですればいくら口頭による口約束だとしても次期公爵家当主である俺様が頭まで下げたのだから、信じて貰えるであろう。


 これで信じて貰えないのだとしたら、俺が思っている以上に前世の記憶が戻る前の俺がそれだけヤバかったという事なので、それはもう諦めるしかないだろうし、地道に婚約破棄をしてもらえるまで信頼を得ていく必要があるだろう。


「とりあえず俺様は婚約破棄をされたからと言って何もするつもりは無いという事を理解して貰えたのならばそれで良い」

「…………………あ、あの……っ」

「うん? どうした? オリヴィア」


 言いたい事を言い終えてスッキリしていると、オリヴィアがオズオズといった感じで俺に声をかけて来るではないか。


 一体俺の言葉のどこが気に食わない、または理解できないというのだろうか?


 説明した内容は『婚約破棄をしてもこちらからは報復などはしないし、恩を返さなければと思う必要は無い』と分かりやすく、というか勘違いされても困るのでほぼ直球で伝えられたと思うので理解できなかったなどは無いだろうし、オリヴィア自身が俺との婚約を嫌がっている事は今までの態度やゲームでの流れからみても間違いないので、俺の話した内容が気に食わないという事も無いと思うのだが……。


 そう思いながら俺は、オリヴィアへ言いたい事を言うように促す。


「あ、あの……ロ、ロベルト様は私との婚約を解消したいと思っているのでしょうか……?」


 はいそうですっ!! 死にたくないので死亡フラグであるオリヴィアとの婚約は双方円満で破棄できればと思っていますっ!!


 と、思わず元気よく口にしそうになったのを何とか堪える事ができた俺を誰か褒めて欲しい。


「…………逆にオリヴィアは俺様と婚約破棄をしたくはないのか?」


 しかしながらカッコイイ悪役というのは、時には泥臭く戦う主人公達とは違って対面を気にしなければならない。


 当然泥臭く戦うなどはもっての外であるし、それこそこちらから婚約を申し込んだにも関わらずやっぱり嫌だと、自分の言った言葉を覆すようなカッコ悪い行動はしたくないし、見られたくないものである。

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