第123話 身内には仁義や任侠を通す



 …………うん。俺と同じくらい頭が良いと言って良いだろう。


 やはり俺が思っていた通り、いや……それ以上の能力を持っているようで更に俺はこの男が欲しくなった。


「そこまで分かってしまうとは流石だな。しかし俺はお前を雇っているような奴らとは同じと思われては癪だから一応言っておこう。もし俺の陣営になるのであれば人質にされているお前の家族を確実に助けてやろう。それこそ、お前を雇っている奴を潰してやるよ。どうする?」

「断ると私も家族も殺されるのであれば、まだあなたの下に仕えた方が生き残る可能性がある。それに、あの糞野郎をぶっ潰してやるという言葉が本当であれば、それをどれだけ今まで待ち望んでいたか……」

「あぁ、約束しよう。私の部下になるのであれば今お前を雇っている奴を確実に潰してやるしこの手で恨みつらみを晴らしたいといのであればそいつを生きた状態でお前の目の前まで持って来よう。そしてお前の家族を一生食わせていけるだけの金銭的な援助もしてやろう。俺はな、道具を使い捨ているのではなく磨き上げる方が好きなんだよ。確かに部下を脅して強制的かつ潰れるまで行使するというのは、悪という観点で言えば満点なのだろうが、カッコいい悪役かと言われれば、それはただのチンピラであると言えよう。やはりカッコいい悪役、渋い悪の世界というものは漢らしさが無ければならないというのが俺の理想でもある。であればこそ暴力で部下を動かすのはナンセンスだ。」


 今しがた『断ればどうなるか分かるよな?』と脅していた者が下も乾かぬうちに何を言っているのだと俺でも思う。


 しかしまぁ、断られたからと言って殺すつもりはないので、この場合はセーフだろう。


 殺されると言うのは相手が勝手に勘違いしたに過ぎないのだから、勘違いした相手が悪のであって、俺は悪くない。


「…………分かりました。このシュバルツ・フォゴット、黒の英雄様を信用しましょう」

「ふむ、物分かりが良い奴で、面倒事を回避できて良かったよ。良いか、よく聞け。俺様は、身内には仁義や任侠を通すが、裏切った奴は容赦しないという事を覚えておけ」


 そして俺はそう言いながら相手に手を差し出して握手をするのであった。





 とりあえず一旦は参謀に成り得そうなシュバルツを味方に加える事ができてホクホクなのだが、近いうちに信頼関係を築く為にもアイツを雇っている、いや、言い方を変えると家族を人質に脅して危ない橋を渡らせ、使い捨ての駒として使っている馬鹿を捕獲して生きた状態でシュバルツの前に持ってこないとな。

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