第122話 馬鹿と鋏は使いよう


 

 そしてこの青年は頭が切れるからこそ、先を読み過ぎて早々に諦めてしまったようだ。


 もしここでゴドルドのように悪あがきをしていれば俺が確固たる証拠を持っていないという事に気付くことができたであろうに。


 むしろだからこそ俺は、頭が切れるコイツならばゴドルドのように悪あがきする事もせずに早々に諦めてくれるだろうという、ある種の信頼をしていたからこそ、俺は行動に移せたわけで。


 やはり適材適所というか、馬鹿と鋏は使いようというかなんというか……。


 まぁ、ゴドルドのように駄々をこねた場合は隷属魔術を使って隷属させた後に無理やり吐かせれば良いだけなので、結局のところその手間が無くなったというだけなのだが。


「ならば話は早い。実はお前にとって悪くない話を持ってきた。勿論その話を受け入れるかどうかはお前の自由なのだが、拒否した先に未来があるとは思わない事だな」

「いまさら脅し……の訳がないでしょうし、話を聞かない選択肢を選んだ所で貴方にここで消されるのでしょう。これは結局脅しではなくて既に覆す事ができぬ決められた未来であり、事実を述べているだけということなのでしょう。であれば逆に隠しても良い情報を教えてくれたという点で言えばある意味優しさという風にとらえる事ができるわけですね」


 …………結局それは脅しと何が違うんだ? とは思ったのだが口にはしない。


 きっと彼の中では明確に今回俺が取った行動と脅しという言葉の意味は異なると言えるだけの何かがあるのだろう。


 頭が良い人物はそういう者である。


 彼らは勝手に頭の中で一を十にして完結し、そこに至るプロセスを省いて話そうとする人が多い気がするので、そこを突いたところで話が脱線する為この場合はスルーするに限る。


「フム、理解が早くて助かる」

「そう言ってもらえると、頭が良いと言われているみたいで少し嬉しいですね。そしてあなたの口ぶりからして私がここで口を割らなかったところで、何らかの方法で確実に私から情報を手にできる方法があるのでしょう? だから私が拒否したところで生かしておく必要もないのでこの場で殺すと、ヒントをくれた貴方はきっと優しい人なのでしょうし、その方法で情報をさっさと引き出して殺せば良いものを私の意志で情報を口にするか死ぬかの選択肢を与えてくださった……。であれば私は貴方に全てお話ししましょう。生きていられたらですが……」


 なるほど、俺がコイツに『ここで話すか死ぬか』という事だけでここまで思考を巡らせていたのか……。


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