第113話 まるで物語のヒロインとヒーロー
◆
そして後日。
今日はお父様が主催のパーティーであると共にわたくしの婚約発表の日でもある。
だというのにロベルトのクズは今日遅れてくると言うではないか。
その為初めに黒衣の英雄の賞与先にした後にパーティーをという流れになった。
どうせならばその黒衣の英雄とわたくしを結婚させるべきではないのか?
黒衣の英雄がどのような人物であるのかは分からないのだが、外国に奪われる前にこの国に留めさせるべきであり、その駒としてわたくしを使った方がどう考えても有効活用できているのではなかろうか?
わたくしですらそのくらいの事を思いつくので、それをお父様が思いつかない筈がないと思うのだけれども、わたくしがロベルトのクズと婚約する事に、黒衣の英雄と婚約する以上のメリットが他にあるのだろうか?
いくらそのメリットを考えた所でそのメリットが何なのか思いつかない。
やはりお父様はボケ始めたのではないのか? というのが未だに一番しっくりくる。
「準備ができました」
「ご苦労様ですわ」
そんな事を思っていると、わたくしの身支度が終わったようなのでそのまま賞与式をする謁見の間へと移動する為に部屋を出たその時、わたくしは誰かにぶつかったようで、その反動で倒れそうになる。
「きゃっ!?」
「……大丈夫か?」
「…………は、はいっ」
しかしわたくしは、どうやらぶつかった相手に背中へ腕を回す形で支えられてくれたお陰で倒れる事は無かった。
それは、端から見ればダンスのワンシーンにも見えた事だろう。
そしてわたくしは文句の一つも言おうと思ったのだが、わたくしとぶつかった相手は全身黒色の衣服に身を包み、その素顔は黒い仮面で目元を隠されていた。
その全身黒で纏めた姿を見たわたくしは一目見てこの方が『黒衣の英雄』であると理解する。
というか唯一見える口元からしてもこのお方がイケメンである事は間違いないと思えるくらいには、わたくしの目に映る黒衣の英雄様は光り輝いていた。
姫と正体不明の騎士、既にわたくしには決められた婚約者がいる。
それはまるで物語のヒロインとヒーローそのものではなかろうか。
禁断の恋が始まったとしてもなんら不思議ではない。
というか、多分わたくしはもう既に黒衣の英雄様に心を奪われかけているのが自分でも分かるくらいにはときめいてしまっている。
「なら良かった。女性に怪我をさせたとなれば一大事だからな。とりあえず後々どこか痛み始めてしまう可能性もあるからこれを渡しておこう。身体のどこかに異変を感じた時はこれを使えばいい」
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