第111話 心の底から腹が立つというもの
そもそもあり得ないのだ。
確かにロベルトというクズは血筋だけ見ればわたくしとの婚約は可能な血筋をしている。
しかしそれだけである。
むしろその他のマイナス要素が多すぎてまだどこの血筋かも分からない小金持ち程度の平民の方がマシであると言えるレベルでロベルトの評価は低いと言っても過言では無いだろう。
というのも一番問題なのは、あの自己中心的な思考回をもち、実際に言動として現れているような奴を皇族である私を嫁がせた場合、その権力を持って自分の欲望を満たそうとする事など容易に想像ができるからである。
なんならその肩書を持って他国のパーティーへ参加して腹違いの子供を種付けしてきて国際問題に発展するなど、間違いなく起こるであろう。
どう考えても帝国側としてもデメリットが多すぎる。
であればまだ平民の元に嫁いだ方が皇族であるわたくしの肩書だけで相手をある程度コントロールする事は可能である分マシであろう。
確かに、皇族であるわたくしを娶ったという事で増長し、周囲にはいびり散らす可能性はあるものの、それは所詮平民か帝国内の下級貴族だけであろうし、それであれば多少問題行動のもみ消しの為に金銭を支払う可能性もあるだろうがロベルトが将来的に起こすであろう問題によって支払う必要が出てくる金銭に比べると安いものだろう。
そして何よりも、まだ良い夫となる可能性があるだけ平民の方がどう考えてもマシである。
それを分からないお父様ではないはずだ。
であれば裏でロベルトのクズがお父様と取引をしているのは間違いないだろう。
恐らくロベルトのクズはわたくしを異性として欲しいという訳ではなく『皇帝陛下の娘』という肩書を持つわたくしを身内に引き入れる事によって権力を高める事が目的である事は明白であり、その事がさらにわたくしの怒りを増大させていく。
何故そうだと断定できるかというと、その答えは至極簡単であり、異性としてわたくしの事を魅力的に思っているのだとしたらオリヴィアと婚約した時と同時期にわたくしの所にも婚約の話が来ていないとおかしいのである。
その事が『お前には異性としての魅力は無いが道具として優秀だから娶ってやるよ』と言っているようなものであり、心の底から腹が立つというものだ。
「何を勘違いしているのだ? エリザベートよ。むしろ今回の婚約に関しては我がロベルトの元まで自ら出向き、頭を下げてまでして何とか取って来た婚約なのだぞ? それが何故ロベルト側がお金を払う必要があろうか? むしろ我の方がお金を払ってでも婚約を取り付ける寸前であったのだぞ?」
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