第108話 婚約するにあたっての条件



 そう誇らしげに言うカイザル陛下。


 これは、例え俺がクズであろうとも俺が他国に渡る事を考えると娘が不幸になったとしても、例え第二夫人であろうとも嫁がせるつもりであったという事なのだろう。


 それが皇族として産まれた者の宿命として娘も覚悟をしているという事を教えられたところで、俺は何に安心すれば良いのだろうか?


 というか『安心して欲しい』と言う割には何一つ安心できる要素が無いのは気のせいだろうか?


 むしろ退路が断たれているように感じてしまうのは俺だけなのだろうか?


 というか、カイザル陛下からそこはかとなく『我の娘と結婚できて光栄だろう』と本気で思って良そうなのが少しばかり腹が立つ。


 はっきり言って、もし俺がクズではなかったとして、カイザル陛下の娘から嫌われていなかったとしても、あの女は無いと思ってしまうくらいには気の強いというか、なんというか……。


 皇帝陛下の娘という事もあって周囲からどう見られるかという教育もされてきたのだろう。そのせいか曲がった事が大っ嫌い、真面目一辺倒で少しのルール違反すら認めないというお堅い委員長タイプである為、そこから想像できる結婚生活もまた、少しの妥協すら許されない、息が詰まるかと思う程息苦しい結婚生活が容易に想像できてしまうような人物なのだ。


 はっきり言いて俺とカイザル陛下の娘は相性が悪すぎると言えよう。


 更に言えば前世の俺とは『ちょっと……』と思ってしまうくらいには価値観が違い過ぎる為、お互い不幸になる未来が容易に想像できてしまうので、ここはお断りをしたいところなのだが、その言い訳を思いつくことができない。


 これが自由恋愛である前世であれば問答無用でお断りをするのだが、今の俺は公爵家の生まれであり次期当主候補、相手は皇帝陛下の娘である以上政略結婚として見た場合『お互いに価値観が合わない』という理由だけでは婚約の申し出を断る事がでいないのである。


 一応お父様が皇帝陛下からの申し出を断ってさえくれればその限りではないのだが、はっきりいて公爵家としてもデメリットよりもメリットの方が大きすぎるので断るという選択肢はまず無いだろう。


 最悪だ。


 こんな事であれば正体を明かす条件に『自分や周囲の娘を婚約者として紹介してはならない』という項目を増やしておくべきであったと、自分の詰めの甘さを呪いたくなる。


「…………分かりました。しかしながらカイザル陛下の娘さんと婚約するにあたっての条件を加えてもよろしいでしょうか?」



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