第106話 安心して欲しい
「あの、皇帝陛下……一つ良いですか?」
「お? 何だね?」
「その……あまりこれを言うのは忍びないのですが、俺、陛下の娘からめちゃくちゃ嫌われておりまして、学園でも道端に落ちている犬の糞を見るかのような目で俺の事を見てくる程なんですけど……本人の意思を無視して勝手に俺と婚約させても大丈夫なのでしょうか?」
流石の俺も結婚するならばお互いに尊重してくれるひとと結婚したいし、逆に嫌われている人との結婚生活は想像しただけで息が詰まりそうになるので、地雷だと分かっている相手とはできれば回避したいと思っている。
だからこそ俺の事を嫌っているオリヴィアとも婚約破棄をするのだ。
しかし、オリヴィアと異なるのは今回の婚約者候補は皇帝陛下の娘であるという事でり、その娘からではなく皇帝陛下から俺の婚約者として打診されているという事である。
流石に皇帝陛下に対して『あなたの娘とは婚約できません、というかしたくないです』などと言えるわけもなく、しかしこのまま何もしないままではお互い不幸になる未来が分かりきっているので、俺は不敬にならないギリギリを攻めたラインで皇帝陛下に『俺はカイザル陛下の娘に嫌われているんですけど勝手に決めて大丈夫ですか?』と問いかける。
…………いや、これ『あんたの娘の態度どうにかしろよ』というクレームに聞こえてしまうのでは? それは普通に不敬のラインを飛び越えている気がするんですけど……。
「そうか……我が娘はロベルトの近くに居たにも関わらず、ロベルトの真の姿を見破る事どころか何も感じる事ができなかったという事か……。それだけロベルトの演技が凄いと言う事なのだろうが我が娘ながら情けない。しかし安心して欲しい」
下手したら不敬罪で牢屋にぶち込まれ、お父様に迷惑をかけてしまうと思ったのだが、その心配はしなくて良さそうだと安心する。
しかしながら、俺が伝えたかった事も明らかに伝わってない気がするんだが……。
というか、まったく安心できないんだけど……。
「安心……ですか?」
「あぁそうだ。我が娘はこれでも優しい心を持つ者に育ってくれたと思っておる……っ。だから愚者の演技をしているロベルトの本当の姿を知れば、娘はきっとロベルトの事を分かってくれる事だろう」
いや、分かってくれなくて良いので婚約は無しでお願いします、という言葉を何とか飲み込めた俺を誰か褒めて欲しい。
あと、演技ではなくて以前の俺はガチでクズだったので娘さんは悪くない。
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履いてますよ(*'▽')ノ
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