第105話 めちゃくちゃ嫌われている
するとカイザル陛下は、サインをし終えたのを見て仮面を外した俺の素顔に少しばかり驚愕するではないか。
「お前の父からロベルトの自慢話ばかりここ最近聞かされていたのだが、正直な話ただの親バカの話す事だと半信半疑であったのだが、どうやら我が思っている以上に真実を喋っていたという事か……。しかしながら正体を隠したいというのと、今までその正体を隠して愚者を演じて来た理由は『正体を隠す事によってどの組織にも所属しない』というところかの。小さい時はそれこそ自分で対処できる事も限られている上にお主の才能で甘い汁を吸おうとする有象無象の大人たちの相手をしているとその時間が勿体ないからのう……。だからこそ愚者を演じて人を寄せ付けなかったといったところか」
「……概ね正解です。流石皇帝陛下」
カイザル陛下は俺が正体を今までもこれからも隠して生きようとしている理由を、カイザル陛下なりに推測してくるので、とりあえず概ね正解であると答えておく。
というか『実は異世界転生しました』などと言っても教えるまでが面倒くさいし、そもそも本当だと信じてもらえるのかも分からないので、ここはとりあえず話を合わせた方がマシだろう。
「なるほど。しかしあの今噂である黒衣の英雄がロベルトであったとは……しかしそれによって我が娘をロベルトと婚約させる事もできるというもの。運が良い事にロベルトが今まで愚者を演じてくれたお陰でお主の元に娘を嫁がせようとするライバルは少ないというのは有り難いかぎりだのう」
「……え?」
「……我が娘は嫌とでもいうのか?」
「……いえ、光栄でございます。あまりに光栄過ぎてビックリしたんだと思います。多分」
「はははははっ!! そうだろうそうだろうっ!! しかし、残念な事にお主には既に婚約がいるらしいのう……。本当に残念じゃが。まぁ、でも第二夫人でもお主であれば問題ないか。むしろお主の元に嫁がせる事ができるのであれば第二夫人であれ喜ばしい事であろう」
そう言いながらカイザル陛下はちらちらと俺の方を見てくるあたり、明らかに『自分の娘を第一婦人にしろ』という圧を感じてしまう。
これは、俺がオリヴィアとの婚約が破談になる事は伏せていた方が良いだろう。
…………というかあの日から一向にオリヴィアから破談の話が来ないんだが……どうなっているのだろうか?
この後お父様に確認してみた方が良いかもしれない。
カイザル陛下の娘からめちゃくちゃ嫌われているという事が良いのではなかろうか、と思ったのでその事を話す事にする。
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