第104話 逃げると言う選択肢は無い
カッコいい悪役として生きていくというのは、貴族と同等かそれ以上の見栄とプライドで生きていかなければならないのだ。
故に、本心から言えば今すぐにでも我関せずで帰りたいのだが、悪役としてはここで皇帝陛下から逃げると言う選択肢は無いわけで。
「それで、正体は隠すか? それとも正体をバラすか? 今から皇帝陛下を呼びに行くのだが、正体を隠すか隠さないで対応が変わってくるからな」
「フン、隠すなどそんなダサい事をするとでも思っているのか?」
……言ってから気付く。どう考えても隠した方が良かったのではなかろうか? と。
いや、だが相手が単身で正体が分からない上にスタンピードを止める程の相手へ会いに来てくれたのだ。にも関わらず正体を隠すと言うのは少しばかりダサいと言うか、フェアじゃないと思ってしまい反射的にそう答えてしまったのだから仕方がない。
それに、対処方法が無いわけではないのでどうにかなるだろう。
「ただし、素顔で会うには一つ条件がある」
「……条件とは?」
「ガーランドに対して行ったように、俺の正体を第三者にバラさない契約を結んでもらう事を受け入れられるのであれば、正体をバラシても良いだろう」
「……分かった。一応そう伝えてみる」
どうせ外に漏らさなければ正体を隠そうがかくさいまいが関係ないだろう。
そしてガーランドが部屋の外へと出て行き皇帝陛下へとむかったようである。
おそらく俺の辺な要求によりもしかしたら少しばかり時間がかかるかもと思っていたのだが、想像以上に早く終わったみたいで十分もせずに俺がいる部屋へとガーランドが皇帝陛下を伴って入ってくる。
ちなみに俺はというとガーランドが出て行った時点で黒い仮面を装着しており、今現在では俺が誰なのかは分からないようにしている。
「……お主がスタンピードを止めてくれた黒衣の英雄であるか……。国の長として感謝する」
そして皇帝陛下であるカイザル陛下が俺へ感謝の言葉を継げると頭を下げるではないか。
ど、どうすればこの場合正解なのだろうか?
悪役として偉そうに対応するか、それとも一国民として頭を上げるように促すか……。
そんなこんなで迷っている内に皇帝陛下は下げた頭を上げ、俺の方を直視してくる。
ガーランド曰く俺の希望は通ったみたいなので、この部屋へ入って来た時に契約書に皇帝陛下のサインを書いてもらっている為、俺はゆっくりと仮面を外す。
「…………もしかしたらと思っておったが、本当にロベルト、お前だったとは」
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