第103話 そんな話は聞いていない




「…………そうか」

「驚かないんだな。流石というか何というかロベルト様の態度から察するにこうなる未来は既に予期していたという事なのだろうな……」


 ぶっちゃけた話、まさか皇族主催のパーティーに呼ばれるなどとは思ってすらいなかったのだが、あえてここは驚く事もせずに返事を返すと、ガーランドは『俺がもともとこうなる事を予期していた』と勘違いしてしまったようである。


 悪役たるもの『知らないどうしよう』とあたふたする姿は見せられないので、当然『実は知った風な態度を取っていただけで実は知りませんでした』と返す事も当然できない訳で……。


「当り前だ。こうなる事は予め予測していた」


 なので俺はガーランドへ『当たり前だ』と返す。


 しかしながら当初の俺としては『恐らく冒険者ギルド側から今回の功績を何らかの形で俺に還元したいという話だろうな』と思っていた事については話さない。


 別にこれに関しては嘘を吐いている訳ではない。言っていないだけだから何も問題は無いだろう。


 まぁ、既に『知っていた』t嘘を吐いている時点で今更嘘の一つや二つ吐いたところでどうなるんだという訳なのだが、それはそれこれはこれである。


「流石ロベルト様だな……。娘を鍛え上げたのも今回のスタンピードを見据えての事だろうし、一体どこまで未来が見えているのか今更ながらに恐ろしい存在だよ、ロベルト様は」

「……フン、褒めても何も出ないぞ。しかし、それを伝えるだけであればわざわざ俺様をここへ呼びよせるような手間をかける必要も無かったのではないか? その報告以外に俺様をここへ呼ばなくてはならない理由があるのだろう?」


 とりあえずこのままパーティーの話を切り上げたいと思った俺は話題を皇族主催のパーティーから、俺を冒険者ギルドへ呼んだ理由へと変える事にする。


 このまま俺がパーティーへ参加するかどうかの答えを言わずにこの場から去るというのが理想ではある。


「あぁ、それなんだが……ロベルト様の事ならばもう気付いているかとは思うが、実は今この冒険者ギルドへお忍びで皇帝陛下様が来ていてな……ぜひ英雄と会わせて欲しいと言われてしまってな。騙し討ちのようになってしまうんだが一度会ってくれないか?」


 うんそうだろう、そうだろう。やはり冒険者ギルドとして今回の功績を何らかの方法で俺へ還元したいという事…………ではなかったようだ。


 あれ? そんな話は聞いていないんだが……?


「……この俺様がわざわざ冒険者ギルドまで来たと言う事はどういうことかガーランドも理解しているのだろ?」

「あ、ありがとうっ! 感謝する!」

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