第101話 強すぎる
「お父さん、何心が折れそうになっているのだ?」
ここにいない筈の娘の声も聞こえ始め、いよいよ俺も最期が近づいて来ているのだろう……。
「娘の前でそんな情けない顔しているとお母さんに尻を叩かれるぞ? それに、諦めなければ負けではないと教えてくれたのはお父さん本人ではないか」
「フン、幻聴にまでそう言われては……は? 娘? 幻覚とかではないよな……?」
「これが幻覚に見えるのか? お父さんは。私は正真正銘此処にいるぞ。あとこれ。ロベルト様から頂いたエリクサーを数本渡しておくから、他の仲間にも使ってあげて。後は私たちがスタンピードを抑えるからエリクサーで回復した後は後方の支援をお願い」
そして娘はそう言うと周囲にいる魔獣たちをまるで羽虫か何かかのように簡単に潰していくではないか。
少し前の娘であればここにいる魔獣を十匹倒せれば良い方だと思えるくらいの実力だったと思うのだが、明らかに強くなりすぎている。
これは間違いなくロベルト様が影響しているのであろうが、きっと教えてはくれないだろう。
自分よりも強くなった娘にはもう教える事など何もないと、寂しさを覚えると共に自分ではまだ見たことのない景色を今見ていると思うと少しばかり嫉妬しそうにもなる。
それら含めて娘の成長を間近で見られて嬉しくもある。
複雑な気分だ。
「ギルドマスター……先程の女性は……?」
「俺の娘だ。あとこれは娘が届けてくれたエリクサーだ。飲んでおけ。エリクサーはまだまだあるから飲んだ後は重傷者から順番に助けて行く。その後は娘の邪魔にならないように後方へ戻って討ち漏らした魔獣の対処をするぞ」
「へ? え? 娘さん? は? つ、強すぎませんかね?」
「自慢の娘だ」
娘が魔獣を潰し始め、周囲に魔獣が居なくなった事により近くにいた部下も余裕が出てきたのだろう。
肩で息をし、汚れた腕で顔を拭いながら先程の女性は誰なのかと聞いてくるので素直に娘だと答えると、呆気にとられた表情で娘を見つめながら『強すぎる』と言うではないか。
確かに、俺も我が娘ながら強すぎると思うのだが、それ以上に娘を褒められて嬉しさが勝ってしまう。
「さて、ここで駄弁っている時間も死に近づいている重症者がいるかもしれない。お喋りはこのくらいにしてまずは負傷者の回復をしていこうか」
「は、はいっ!!」
そして俺は魔獣たちをなぎ倒していく娘を横目に今自分がしなければならない事をするのであった。
◆主人公side
「それで、何で俺様がここに呼ばれたんだ?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます