第97話 夢見る少女



 そんな事を思いながら眺めていると、その者はもじもじしながら『体つきは女性らしくは無いがその分夜の方は頑張る』などと言うではないか。


 これはもしかしなくとも美青年風に見えているだけで女性なのではなかろうか……いや、もしかしなくとも姉妹や姉という言葉や、先ほどの反応からしてどう見ても女性であろう……。


 既に腹を括っているとはいえ、俺の直感がスルーしろと言うのもなんとなく理解できてしまう。


 しかしながら『悪役』という観点で考えれば、部下を全て女性にしているような悪役も昔ならばいざ知らず現代では少なくないので、これはこれでありなのでは? と自分に言い聞かせる。


「いや、そこまでの事はする必要は無い」

「そ、それは俺の事を女性としては見る事ができないという事なのかっ!?」

「そうは言っていない。むしろ十二分に魅力的だと俺は思う。しかしながら魅力的だからと言ってそういう行為に及ぶのは畜生となんら変わらないだろう? それに、魅力的な異性を見つける度にそういう行為をしていては俺の身体が持たないし、相手にも失礼だ。やはりそういう行為はお互いに心が通じ合った者だけでやるべきだ」


 流石に見境なくそういう行為をするつもりもなければ、配下になったからには俺とそういう行為をしなければならないという訳でもないというか、そもそもマリエルが俺を裏切った理由の一つに『マリエルには内緒で他の女性とそういう行為をしてヤンデレ化したのではないか?』という可能性もあるのではないか? という可能性もあるような気がしてならないので、マリエル以外の女性とそういう事をすること事態が死亡フラグを立ててしまう事に繋がるかもしれないのであれば全力で避けるべきだろう。


 というか、嫌われていると思っていたマリエルとサーシャから、実は俺が思っている以上に好かれている事を知った今、実はその可能性は高いのではないのか? と、当初は『もしかしたらその可能性もあるかもしれない』という程度のものであったのが、今現在では『その確率は高いのではなかろうか?』と思えるくらいには変わってきているわけで。


「なるほど……確かにそう言われればそうだな。俺も心が通じ合った者とそういった行為をしたいと思っている」

「姉はこう見えて外見に似合わずかなりのロマンチストで、夢見る少女なところがございます。主様はそれを見抜いての上で姉に恥をかかせないようにとのご配慮……感謝いたしますっ」

「こ、こらっ!! 何を言っているっ!? 恥ずかしいから止めろっ!! ち、違うんだ主様っ!! こ、これはその……、妹が勝手に言っていることだから気にする必要は無いぞっ!!」

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