第94話 決められた答えがない問題
見ろ、スタンピードを作っている魔獣たちがゴミのようだっ!!
「クフッ……素晴らしい光景だッ!!」
「貴重なエリクサーを分け与えて下さり助けていただけた事は感謝いたしますが……あ、貴方様は何者なのでしょうか……?」
この光景に酔ってしまった俺は中二病的な言葉をつぶやきながら両手を広げているその時、先エリクサーを渡した冒険者が蘇生させた女性の冒険者から『何者ですか?』と話しかけられてしまう。
まさか先程の、中二病に酔った俺の言動を見られていたとは思っておらず、急に素に戻ってしまい、羞恥心が爆発しそうになるのをグッと堪える。
俺の知っているカッコイイ悪役は仰々しい態度を第三者に見られたとしても、そして話しかけられたとしても決して恥ずかしがらない。むしろそれを貫くはずだ。
耐えろっ! 俺っ!!
「ほう、一命をとりとめたようだな。であればこの俺様がエリクサーを渡した甲斐もあったという事だな……」
「な、何と無事に……欠損した腕も元通りに再生しています……っ。この御恩は感謝してもしたりない程です……。私の姉も瀕死の所を助けていただけたみたいで、どうこの恩を返していけば良いのかと、悩むほどです……っ」
考えた末、とりあえず『何者であるか』というところには触れずに答える。
正直な話し、こういう場合にどう返せば良いのか考えていなかったのである。
いや、考えていない訳ではない。無限にある選択肢の中から決めかねていただけなのだが。
さて、どう答えれば一番カッコよく振舞えるのだろうか?
決められた答えがない問題ほど解くのが難しいわけで。
うん……? 姉? いや、まぁ良いか。そんな事は、今はどうでも良い事だしな。
「フン、俺様が勝手にやった事だ。それに対して勝手に恩義を感じるのは好きにすれば良いが恩返しを期待して
「も……申し訳ございません……っ」
目の前の女性は、金色の瞳に漆黒の長い髪をポニーテール状に纏め、褐色の肌に長い耳、そして大きな胸を持っており、そのたわわな果実を揺らしながら即座に片膝をつき頭を垂れると、息が詰まったかのような声音で謝罪をし始めるではないか。
どうやら、偽善行為をしている訳ではないと俺を怒らせてしまったと勘違いしていたようである……というか俺に怯えすぎではないか? むしろそっちの方が傷つくのだが、それも俺様の強大な力(召喚した魔獣たち)を見た故に感じる恐怖であるのならば、それはそれで悪役ムーブとしては有りだな。
「かまわん。その程度の事で怒りはしない」
「あ、ありがとうございます……」
「それで、お前はその容姿からしてダークエルフなのか?」
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近況ノート(限定)にて99話(ストック分)まで更新いたしました。
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