第91話 古典的な悪役ムーブ
それがどうしてご主人様が大好きなわんこのように追いかけて来るのか……。
あの表情は『魔獣たちに殺される前に私が殺してやる』という狂気に満ちた表情ではなくて『ご主人様どこ行くんすかっ!? 置いてかないでくださいよっ!! 玩具(魔獣討伐)を独り占め仕様だなんてそうはいかないっすよっ!!』というような事を思っているのが彼女達の表情から伝わってくるし、実際にパーティーメンバー同士で使えるメール機能によって送られたメールからは『ロベルト様であれば躱せるはずなのに魔獣たちと遊びたいからってわざとプレヴォの攻撃を喰らいましたね?』『ロベルト様だけあの面倒くさい男から抜け出して魔獣たちと戯れるとか卑怯だぞっ!!』といった内容の文章が送られてきている。
サーシャはまだ分かるのだが、マリエルはここまで魔獣討伐をしたくてたまらないというキャラクターでは無かった筈だと思うのだけれども……。
こいつら二人から学園を卒業後に逃げ切る方法が思いつかない。
本当に、どうしてこうなった……。
二人ともゲームでは俺に対する初期好感度はマイナスだったはずで、俺は彼女達の好感度を上げるような行為、ゲームでいう花やアクセサリーを買ってプレゼントするなどの行為を(ゲームでは花やアクセサリーを一日一回プレゼントでき、好感度を上げることができる)一回もしていなかったというのに……。
なので俺の見立てでは彼女達の好感度管理は完璧であり、出会った当初からまったく変わらずマイナスのままだと思って安心していたのだが……なってしまった事を今さらあれこれ後悔しても仕方がない。
そんな事を考えているとそろそろ地面に落ちそうなので、軍服調の漆黒の衣服へとストレージを使って一瞬で着替え態勢を整えてからカッコよく着地する。
何故わざわざ着替えてカッコ良く着地する必要があるかというと、このスタンピードは仕組まれたものなので、当然仕組んだ本人がこのスタンピードを魔術を行使して安全な場所から観戦している為である。
えっと、確か……ゲーム画面から逆算して覗いている角度はあのあたりか……一応目線を合わせておくか。
やはり、気付いていないと思って遠くから覗いていたにも関わらず敵と視線が合うというのは、教科書に出るくらいには古典的な悪役ムーブだろう。
そして気付いているぞ、とニヒルに笑って見せる。
か……完璧だ。
「邪魔だ……」
折角俺が完璧な悪役ムーブを演じる事ができて感動していると魔獣が突っ込んでくるので漆黒の炎で焼き尽くす。
因みに色が黒いからと言って普通の炎魔術とダメージや能力などは変わらない。
色が黒いだけである。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます