第90話 既に破綻していた可能性



 そう言いながら何度も試していくうちにプレヴォの魔力を使い果たしたのだろう。肩で息をしながら辛そうにし始める。


「自分の思っている通りにならなかったら子供のように癇癪を起して他人に迷惑をかけ、そのくせ自分は悪くないと喚き散らす……。可哀そうな人」

「ここまで話の通じない奴はなかなか居ないぜ……」

「くそ、俺は君たちをロベルトの洗脳から助けてやるために頑張っているというのに勝手な事を言いやがって……はっ、そうか……その手があったかっ!! 元々そうするつもりだったし丁度良いじゃないかっ!!」


 そんなプレヴォの姿を見てマリエルとサーシャは冷めた視線を向けながら冷たい言葉を吐き捨てる。


 その言葉にプレヴォはイライラし始めるのだが、ここである事を思いついたのか先ほどまで暗かった表情が一転して明るくなるではないか。


「恨むんなら今まで自分がしでかした行いを恨むんだな。風魔術段位二【突風】っ!!」

「「ロベルト様っ!?」


 俺の予想していた通り、プレヴォの風魔法によって俺は魔物達犇めく前線へと飛ばされてしまう。


 その瞬間、マリエルとサーシャの悲鳴にも似た声で名前を呼ばれるのだが安心してほしい…………とパーティーメンバーに送れるメール機能で伝えようとしたのだが、疾風の如き速さで二人とも追いかけてくるではないか。


 そんな二人を見て『俺ってもしかしなくても二人を鍛え過ぎたのではないか?』『こんな二人から今後逃げ切れる事ができるのか?』と心配になって来る。


 学園を卒業したら公爵家を継いで、裏社会を牛耳り帝国を俺様の傀儡にする悪役ムーブをするという趣味を楽しみたいと思っているのに、これでは彼女達に迷惑をかけてしまう可能性が高く行動を自粛しなければならない場面が出て来そうではないか。


 というか、そういうのはさらに鍛えれば済む事なので腹さえ括ればなんの問題でもない。一番の問題は『できる事ならばゲームのキャラクターとは学園を卒業後、縁を切らないまでも遠ざけて疎遠になって行くプラン』を遂行できないという事である。


 というか、これってもしかしなくても二人とも俺への忠誠心が引くほど高まっているのでは……?


 俺の、完璧なプランでは二人からの好感度は上げないまま学園を卒業する事によってそのまま遠ざけて疎遠になって行くという流れの、根本的な『二人の好感度を上げない』というところから既に破綻していた可能性が出てきたではないか。


 おかしくないか? ゲームではサーシャから死ぬほど嫌われており、マリエルからはそれこそ背後からナイフで刺される程にまで嫌われていたのではないのか?

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