第87話 人間臭さ



 ゲームのイベントでは、勝てないと判断して帝都を捨てる指示が出た時にロベルトはマリエルにより後ろから刺され、プレヴォから風魔術によって魔物達のいる場所まで吹き飛ばされてしまい、死亡するというのが一連の流れである。


 そもそもこのスタンピードは人災であるという事は仕掛けた人物が『どの時期にスタンピードを起こせば帝都に甚大な被害を与える事ができるのか』というのを計算して起こしているので、スタンピードを防ぐことが出来ず破壊された帝都の景色から物語の本編が始まるというゲームである。


 この俺が死んでからスタート、しかも人殺しの偽善者が主人公の時点で俺はこのゲームをプレイしている時は鬱エンドを望んだものだが、結局ハッピーエンドで終わるので、ゲームをクリアした時は逆に胸糞だった覚えがある。


 それと同時に人気が出た為、キャラクターごとにラノベが出ると聞いた時はいつの時代のエロゲだよと思いつつもロベルト視点の作品だけ購入した程には、このゲームのシナリオには納得いっていないのである。


 さらにロベルト編を読んで分かるのだが、ロベルトは誹謗中傷こそするものの暴力を振るったり権力を振りかざすという行為はしていないのである。


 であれば婚約破棄の時点でロベルトはそれ相応の罰を一応受けているとも取れる為、殺されるというのは明らかにプレヴォがやりすぎだろう。


 ……マリエルに関してはエロいことをしまくっていた、というかロベルト編の醍醐味はそこなのでそれはもうヤリまくっていた為、後ろから刺されても仕方がないかなとは思うのだが、プレヴォだけはどの角度から見ても納得がいかなかった。


 結局プレヴォはオリヴィアを手に入れる為に邪魔なロベルトを排除しておきたかったのだろう。


 婚約破棄をしたとはいえ妨害をされないとは限らないし、今までの鬱憤も溜まっていた事だろう。


 その人間臭さがある意味このゲームが人気になった要因でもあるとは思うのだが、俺はどうしてもプレヴォの事を好きになれなかった訳である。


 だからこそ俺はロベルトに転生していると気付いた時は歓喜したものだ。


 そんな事を思っている間にも前線での戦闘音が徐々に少なくなっている。


 恐らく帝国一の冒険者パーティーである【朱の雫】や、帝国一の魔術師であり宮廷魔術師でもあるダーベル・ドゥ・ブルースが居ればまだどうにかなったのだろうが、人災である以上『この両方が居ない時期』を狙ってスタンピードを起こしたのだろう事を考えるに『どうにかなったかもしれない』という未来はまずあり得ない。

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