第86話 ハッキリ言って普通に無理だ



 しかしプレヴォは、いくら私が違うと否定しても信じようとはせず、それどころか私がロベルト様によって洗脳されていると言って聞かないではないか。


 おそらく今の状態では何を言っても私の言葉はプレヴォには届かないだろう……。


 どうしてこうなってしまったのか? 


プレヴォは私の事を思って色々と相談に乗ってくれていたのではないのか?


 今のプレヴォを見ると、どうしてもそうは思えなくなってくる。


 どちらかというと……いや、止めよう。


 これ以上私はプレヴォの事を嫌いにはなりたくないし、プレヴォがどう思っていて行動していたのか等、どんなに考えた所でプレヴォの口から言われない限りは机上の空論の域を出ない訳で……。


 そんな真実かどうかも分からない事で『だろう』『そうに違いない』『きっとそうだ』などと曖昧な事で悩みたくはないし、勝手に落ち込んで勝手に嫌いになんてなりたくない。


 ロベルト様の件から私は学んだばかりではないか。


「……分かった。やっぱり今のプレヴォは冷静に考える事ができなくなっているみたいなので、一旦私たちは距離を置きましょう」

「…………あぁ。その方が良さそうだ。けど、必ず僕は君をロベルトの洗脳から助け出してみせるから、それまで待っていてくれっ!!」


 そして私はプレヴォと距離を取る事にするのであった。



◆主人公side



 スタンピード。


 魔物が大量に湧き、暴れ狂った魔物たちが波のように襲って来る現象である。


 その現象が起こる原因に関しては諸説あるのだが、今回のスタンピードがゲームのイベント通りであるのならば闇の組織【粛清する者達】が人為的に起こした人災である。


 そしてこのスタンピードは俺の死亡フラグ回収イベントでもあるのだ。


「各自持ち場に付けっ!! 良いかっ!! 勝手な行動は許されないと思えっ!! 家族や愛する者、そして帝国を守りたいと思うのであればここで死ぬ気持ちで挑めっ!!」


 その死亡フラグ回収イベントであるスタンピード、魔物の群れが土煙を上げて帝都の城壁に押し寄せて来ているのが目視で確認できる位置まで近づいてきた。


 既に宮廷魔術師や高ランカーの冒険者達は前線で戦っているようなのだが、数が多すぎて多勢に無勢といった感じである。


 その前線から零れた魔物たちを、俺達学生や低ランカーの冒険者達、街の衛兵たちが始末するという流れなのだが、ハッキリ言って普通に無理だ。


 そもそも魔物が全体的に強すぎる為早い段階で前線が潰れて、そのままの勢いで帝都は魔物達に飲み込まれてしまうだろう。

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