第80話 思考誘導
「……何故そこまでするのですか?」
俺の言葉にオリヴィアは理解できないと言った感じで聞いてくる。
確かに今までの俺を知っていれば、俺の言葉を素直に受け入れる事はできないだろうし、そもそも俺でなくとも貴族が婚約破棄をされて黙っているわけがない。
婚約破棄は相手の顔にも泥を塗るような行為である為。外面に命を賭けている貴族にとって許しがたいことでもある。
その為基本的に婚約破棄を申し込んだ方が『自分の家に問題があった為婚約破棄をするのであって相手の家には何ら問題はない』という体で婚約破棄をするのが一般的であるのだが、俺はそれを『自分に原因がある事は分かっているのでそのような事をする必要がない』と言ったようなものである。
なんなら『ロベルトが原因で婚約破棄をする事となったと広めても良い』とも受け取れる訳で、そんな事を言われれば、何故そんな事を言ったのか気になってしまうというオリヴィアの気持ちは分かる。
俺がオリヴィアの立場であっても気になって確認していた事だろう。
そもそも、それを口にした相手があのロベルトだから猶更である。
その言葉に信用できる要素など皆無。むしろ鵜呑みにする方がバカだとすら言えるレベルで信用ならない。
確認されて当たり前だろうが、以前の俺であれば確認してきた時点で癇癪を起していただろう。
というか暴力に移行せず癇癪止まりなあたり、いかにもモブというか雑魚というかメインキャラにすらなれず読者のヘイト管理の為に使われて要らなくなったら簡単に殺されたのだろうと容易に想像できる。
もし前世の記憶を思い出さなければその運命のままあと数日で死んでいたことだろうと思うとゾッとする。
「先ほども話したが、オリヴィアとの婚約に関しては完全に俺が悪いからだ。嫌がるお前を親の借金返済という身売りに近い状況かつ断りづらい状況を作り退路を断ってオリヴィアの気持ちを無視して推し進めた事。そして婚約してからは婚約者だからと言ってオリヴィアの気持ちを無視した言動をした事。そんな事をしておいて婚約破棄はオリヴィアに責任があるなど言える訳がないだろう。嫌われて当然の事をしたのだからな。それと、今まですまなかった。これからはオリヴィアが望む異性と婚約をしてくれ」
なので俺は再度自分の思いを口にして謝罪をする。
何故謝罪をするかというと、そうする事によって『これで婚約破棄は決定だよね』という思考誘導も兼ねている訳だ。
さらにダメ押しで謝罪の『後は新しい婚約者を探して欲しい』という言葉で締める。
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