第79話 俺だけが黙っていれば良いだけだ
「……そうですか。も、もしそれが真実だと言ったらロベルト様は怒らないのですか……?」
「何故怒る必要がある? ……と言っても今までの態度がそう思わせてしまったのであれば自業自得だろうな。別に怒ったりはしないし受け入れる。それが俺様の答えだ」
オリヴィアは怯えながらも精いっぱいの勇気を振り絞ってその言葉を口にした事が、オリヴィアの表情から窺えることができる。
オリヴィアにそんな表情をさせてしまうくらいに前世の記憶を思い出す前の俺がクズであった事は俺自身理解しているし、それを否定する意味も無ければ以前のように怒鳴り散らすなどもっての外である。
なので俺はオリヴィアの質問に対して『怒らない』と答える。
するとオリヴィアは少しだけホッとした表情をするも、その代わり『何故?』という感情が変りに生まれた事がその表情からも分かる。
というかオリヴィアは俺という存在そのものにPTSDを発症しているまたはなりかけているのか、俺の前にいるというだけでいっぱいいっぱいなのだろう。
故に自分の表情に感情がそのまま反映されている事まで気付ける余裕も、それを隠す余裕も無いのだろう。
可哀そうだとは思うのだが、俺もその件に関しては『もしかしたらそうかもしれない』と思い手紙という手段を提示したのだが、手紙ではなく俺と対面で話す事を選んだのはオリヴィア本人であるので『辛そうだからやっぱり手紙にするか?』というのは違う気がするし、オリヴィアの表情が手に取るように分かるというのは、現状かなり助かっているので教えて表情を隠されても困る為、指摘はしない。
俺だけが黙っていれば良いだけだ。
「そ、それはどうしてか聞いても良いのでしょうか……?」
「そうだな……俺様が今ここで怒った所で、俺様がオリヴィアに対して行ってきた行為が無くなる訳でもない。それに俺様が怒ったらオリヴィアの答えが変る訳でもなかろう? もし本当にオリヴィアが俺との婚約を解消したいというのであれば、それは俺様に問題がある。それをオリヴィアのせいにして怒るというのはあまりにもダサい。だから俺様は怒らない」
俺様がオリヴィアの問いにそう答えると、オリヴィアは目を見開いて意外そうな表情をする。
これは、もう一押しで俺は円満……とはいかないまでも遺恨無くオリヴィアと婚約破棄をできるのではなかろうか?
という事で、ここで一気に勝負を賭ける事にする。
「なのでもし婚約破棄をしたとしても、オリヴィアとの結婚を条件に貸した金に関してはクヴィスト家に返さなくても良い」
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