第78話 誰だって死ぬのは怖い。俺だって怖い。



 俺の方を見ているので俺の視線に気付くのは当たり前なのだが、だからといって俺の視線に気づいた瞬間に視線を外して見ていない体を装うのはどうなんだと思う。


 まぁでも、俺達の関係は色々と面倒くさいというか俺が一方的に悪いのでオリヴィアのそういう態度を取る事も理解はできる。


 しかしながらここでオリヴィアを俺が無視をしても良いものかと悩んだ結果、休み時間にさりげなくオリヴィアへ手紙を渡す。


 その内容は『人目が気になるかもしれないので昼休みに使われていない東校舎端にある実習室で待っているから俺に何か用事があるのならばそこまで来て話すこと。もし対面で話すのが苦手ならば俺が戻ってくる間に手紙をサーシャかマリエルに渡しておく事。対応はどちらでも構わないが、実習へ来ることも手紙を渡す事もしなかった場合は何もないと判断させてもらう』というものである。


 サーシャとマリエルに話した時は一緒についていくと聞かなかったのだが、ご褒美を一つあげると言うと快く引き受けてくれた。


 やはり部下に信頼されてこその悪役だろう。


 というかマリエルに関しては俺を裏切る可能性があるので『奴隷だから』と無理矢理マリエルの理意に反したことをさせることは避けたい。


 そして俺は朝お母様から渡された弁当ボックスを実習室で開け中に入っているサンドイッチを食べながらオリヴィアを待つ事にする。


 すると、一つ目のサンドイッチを食べ終える前に部屋がノックされたので入室するよう声をかけると、おずおずといった感じでオリヴィアが中へと入ってくる。


「……手紙ではなく実習室へ来ることを選ぶとは、意外だな」

「……意外とは、どういうことでしょうか?」

「お前、俺の事嫌いだろう? それこそ婚約破棄を裏で企んでいるくらいには。そしてプレヴォの優しさに触れて恋心を抱いてしまったといった所か? 好きな相手がいる。しかしながら自分は忌み嫌っている異性と婚約している。これで悩んでいる……違うか?」

「……やけに突っ込んだ話をしますね」

「こんな事に時間をかけても仕方がないだろう?」


 嘘である。


 もしここで婚約破棄をできるのであればさっさと婚約破棄をしたいからである。


 そうすれば俺の死亡フラグ回収イベントも少しはマシなモノへと変わるかもしれない。


 誰だって死ぬのは怖い。俺だって怖い。


 できればさっさとその問題を解決してスッキリしたいが故に本題へと急かしてしまっていたというのが本音であるのだが、それをそのままオリヴィアに伝える意味はないので黙っておく。


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近況ノート(限定)にて85話(ストック分)まで更新いたしました。

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