第77話 婚約破棄イベントと、死亡フラグ回収イベント



 それはさておき、一度領地へと無事戻った俺達は今まで通りの日常を過ごしていくわけなのだが、ただ一つ変った事があった。


 それは学園へと通学した時クラスメイトや教師たちがどこかそわそわしているのである。


 特に先祖が武功を上げて成りあがった貴族達が目立ってそわそわしているように見える。


 その姿を見て俺は『そろそろか……』と思う。


「しかし、一週間ほどしか経っていないのに学園内の空気がガラッと変わりましたね」


 当然俺の隣にいるマリエルも流石にこの変わりようには気付いたのか訝しげに呟く。


「どうやら近い未来に大規模なスタンピードが発生するみたいだな」

「スタンピードですか……。それはどれくらい先の話なのでしょうか?」

「そうだな、お父様曰く数日、遅くとも一か月以内とは言っていたな」

「その情報を事前に仕入れていてロベルト様には伝えなかった理由は何ですか?」

「あぁ、ロベルト様であればスタンピードなどどれ程の規模だろうが脅威にならないと思ったからさ。それに聞かれたら答えるよ。隠そうとも思っていなかったし、隠す必要性も無いからな。それに最悪私たち二人でもロベルト様に鍛え上げられた今の力であれば簡単に制圧する事は可能だろう?」

「……それもそうですね」


 それにサーシャが答え、二人で話し合う。


 二人からしてみれば、今回のスタンピードがどれだけ大規模だろうが『災害』という認識にはならないようで、割と落ち着いて会話をしている。


 しかし、俺からすればゲームの、俺にとって・・・・・大事なイベントである為、若干そわそわしている事を二人に悟られないようにしなければ、と気を引き締める。


 その俺にとって大事なイベントとは婚約者からの婚約破棄イベントと、死亡フラグ回収イベントである。


 そして、大丈夫とは思うのだがそれでもその死亡フラグ回収イベントではマリエルに裏切られるという展開があるので『え? まさか裏切らないよね? 俺の奴隷だし主人に反旗を翻すとか無理だよね?』という不安も無いと言えば嘘になる。


 ゲームのイベントである以上、決められた運命を変えることができるのか、それか別の方法で俺が死ぬ未来がなされ運命の帳尻を合わせに来るのか、その時が来るまで分からないというのは、やはりいくらレベルを上げようとも魔獣をテイムしようとも魔術や武術を覚えようとも不安である。


 そんな暢気な二人の会話を聞いていると視線を感じたので、視線を感じた方を確認してみるとオリヴィアが俺の方を見ているではないか。

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