第73話 俺様から見ればゴミレベル



 そう言いながら糞ジジイは無詠唱で炎魔術段位四以上であろう魔術を行使してきた。


 そこは流石だと言えよう。


 無詠唱で段位四以上の魔術を行使できる実力を持っている糞ジジイは恐らく宮廷魔術師の低序列程度であれば余裕で勝ててしまう程の実力を持っているのだろう。


 これ程の実力を持っていれば好き勝手生きようと思うのも理解できる。


 実際今の俺がそうだしな。


 しかし目の前の糞ジジイは一つだけ必要な事を知らないようだ。


 なので優しい俺は一旦糞ジジイが行使した魔術を、指を鳴らす事をトリガーにして発動できるようにしている魔術、水魔術段位二【失敗】を行使して打ち消すとそれをわざわざ糞ジジイに教えてやる事にする。


「は? 儂の魔術が消えた……そんな馬鹿な事があるかっ!! 確かに儂の魔術は発動したはずじゃぞっ!?」

「さすが糞ジジイ。大口をほざく事だけの事はある。それだけの魔術師としての力を持ち、そして公爵としての権力も持っていれば好き勝手に生きようと思うのも、それが『孫を自分の玩具にする事』であっても理解できる。力を持つという事はそういう事ができるという事だからな。しかし糞ジジイ、お前は一つだけ大切な事を忘れているようだからこの俺様が教えてやるよ」


 恐らく先程の魔術は糞ジジイにとって信頼のおける魔術であったようで、それを俺が簡単に打ち消された事に驚愕しているようなのだが、そんな糞ジジイを無視して俺は話を進めていく。


「何が教えてやるじゃっ!! どうせ不正したに決まっておるっ!!」

「糞ジジイが忘れている事、それは自分の行動には全て責任が伴うということだ。今までこの俺様に対して行ってきた数々の無礼極まりない対応のツケを支払う時が来た訳だ。それと、先程糞ジジイが行使した魔術程度この俺様が消せない訳が無いだろう。ハッキリ言って俺様から見ればゴミレベルの魔術だったよ」

「な、何がツケを支払う時が来たじゃっ! なにがゴミレベルの魔術じゃっ! ふざけおってっ!! 無礼な態度を取っているのはロベルト、お主の方ではないかっ!! ケツの青いガキがこの儂に説教を垂れてんじゃぁ……ない……ぞ……っ? な、何でドラゴンがここにいるんじゃ……っ!?」

「何故って召喚魔術を行使してこの俺様がテイムしているドラゴンを呼び寄せただけだろう。何を驚く事がある? 俺は初めに召喚魔術の許可を取っただろう? あと、ドラゴンだけだと思うなよ?」


 とりあえず未だに自分の立場すら理解することができずにガミガミと喋る糞ジジイの話は聞き流しながら俺はその間にテイムしたドラゴン、ニーズヘッグを召喚する。

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