第70話 縁を切るとまで言い放ってくれる



 そしてお爺様はこの俺様に向かって『躾をする』などと言い始める。

 

 その言葉を聞いて周囲の親族、特にアントニーとその母親や近くに来ていた父親は意地糞悪そうな笑みを浮かべてニヤニヤと俺の方を見ているのが分かる。


 もう一度痛い目をさせてやろうかとも思うが、それよりもまずは目の前の糞ジジイにどちらが躾けられる立場であるかしっかりと分からせてやる必要があるだろう。


「お父様、お爺様がこんな事をほざいているのですが、自分の手であの老害に成り下がった老人に対して分からせてあげてもよろしいでしょうか?」

「かまわん。私の父親といえども現当主は我であり、そしてロベルトは我が息子であり次期当主である。そんなお前に対して長年わたって無礼な行為を働いてきた事を咎める事もせず、我が息子を生贄にして他の孫たちのポイント稼ぎの為の道具としてしか見ていない老害は一度痛い目をみないと分からないようだ。この際どちらが上かハッキリさせてあげなさい。それと、先代とは言え今は爵位を明け渡し隠居している身という事を忘れているようなので我々からの援助は本日以降停止させてもらいます」

「何をバカな事を言っておるのだっ!! お前がそんなんだからこんなバカな息子に育つのではないかっ!! 恥を知れっ!!」

「恥、それは一体どんな恥なのでしょうか? 私たち家族が気にいらないというのに金だけ援助しろというのは虫が良すぎるでしょう? むしろこちらの方が恥知らずで金に汚い行為に見えるのですが? それと、他の親族たちも同様に我がクヴィスト家の援助は金輪際一切行わないのでそのつもりでいてください。我がクヴィスト家の影響力で今まで好き勝手して来たようですが、それからはそこの老いぼれにその影響力を求めてください。まぁ、我がクヴィスト家がこの老いぼれからは縁を切るという発言を正式にさせていただきますので、以降どれほどの影響力を持っているのか、そして持っていたとしてもあとどれ程生きる事ができるのかは、知った事ではないので我に泣きついて来ないでいただきたいものだ」


 さすが俺のお父様。俺にこの老害糞ジジイに躾をする許可を出してくれるだけではなく、親族を含めて縁を切るとまで言い放ってくれるではないか。


 そこまで言ってくれるのだから俺の親がそのせいでこれから苦労しないように俺様が頑張って行かないとなと、より強く思う。


 それこそ近い未来にある死亡フラグなんかで簡単に死なないようにしなければな。


 そもそも死ぬつもりは毛頭無いのだが、そこに生き残らなければならない大きな理由がひとつ追加されたわけである。



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近況ノート(限定)にて78話(ストック分)まで更新いたしました。

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