第68話 許せる訳もない
「……何事だ?」
「何事だ、だと? そこのバカにどちらが上かしっかりと教えてやっただけですよ、おじい様。今まで俺が歯向かってこない事を良い事に調子に乗り、公爵という爵位を簒奪するとまで言い放ったのだぞ? それは言い換えると俺様、そして妹や弟を殺すという意味でもあるので一度痛い目をみてどちらが上か躾をしていたまでだ」
やっとこの面倒くさい茶番も終わりだと思っていたその時、おじい様が他の親族を引き連れながら俺達の元へと来ると、この惨状を見て『何事だ』などとふざけたことをぬかすではないか。
そもそも俺はこの糞ジジイの事が昔から嫌いだった。
俺が他の親族からいじめられている事を知っていて見て見ぬふりをしていた事を俺は知っている。
子供だからと言って何も見ていない、何も知らない、何も理解できない等と思っていたのだろうが、子供というのは大人が思っている以上に大人の顔色を窺うし、頭が良い生き物なのである。
あんな露骨に無視していてこの俺様が気付かない訳がないだろう。
というかこの俺様がこんな腐った性格になった要因の一つに、親族による陰湿ないじめも間違いなく含まれているだろう。
このまま俺様が前世の記憶を思い出さなければ物語の序盤で死亡フラグを回収して、ただの噛みつき要員の一人としてあっけなく殺される運命をたどっていたのだ。
その事を考えると、この糞ジジイ含めてその他親族たちをこの俺様が許すわけがなかろう。
というかこの糞ジジイは孫たちに嫌われたくないという感情から、その他大勢の孫から嫌われてしまう事と俺様一人を見捨てる事を天秤にかけて、俺様を見捨てる方を選びやがった時点で、そこに悪意があろうがなかろうが俺様からしてみれば『ロベルトをいじめても怒られない』と親族たちが調子に乗り始めたきっかけを作った大戦犯でもある。
それはお父様やお母様も同様の事を思っているのか、実の親だというのにおじい様に向ける視線はどことなく冷めているように見える。
この俺様が、まだ生意気なクソガキで、だけど根性は無い(あえて鈍感になり気付けないようにしていた)からやり返すことができない程度に収まっていたのは両親の愛情をちゃんと理解していたし、受け止めていたからに他ならない。
それでも結局は、ストーリー上ではクズな性格によって気付かぬうちに死亡フラグを立ててしまっていたのだ。
俺様が死んだときの両親の事を思うと、どう考えてもお爺様を含めてこの親族たちとは仲良くしようとも思えないし、許せる訳もない。
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