第67話 それ相応の態度



 しかしながら、それはそれとして自分の招いた事に関してお父様を動かしているのは、いかがなものと思うので、自分の撒いた種で伸びてきた芽は自分で刈り取るべきだろう。


 そう思った俺は痛みで立つ事も出来ずに顔を涙と鼻水、脂汗をかき涎を垂らしながら、それでも俺の目の前で弱みを見せる事の方が嫌なのか必死に耐えているアントニーとその母親の前へ出る。


 というか腕が折れた時など普通に『痛い痛い』と叫びながら転がっていたので、今さら耐えようとしても意味がないように思えるのだが……まぁ、アントニーにはアントニーの美学というか守りたいゴミみたいなプライドがあるのだろう。


 そんなプライドなど捨ててしまえば楽になるのにと思うものの、言ったところで聞きやしないので黙っておく。


 今はそんな事よりも自分で蒔いた種から出てきた芽を刈り取る事の方が優先度は高いしな。


「この俺様が今までやられっぱなしでやり返してこない事を良い事に今までお前らは散々調子に乗ってきたが、これからはしっかりとやり返して行くから、この事をその小さな脳みそでよーーーーく考えてからこれからは生きて行くんだな。俺も悪魔ではないので今回の件に関しては貴様等二人の事は許してやるが、次はその首と身体が切り離されるものと思えよ」

「ぐぎぎぎぎぎぎ…………っ」

「……………っ」


 そして優しい俺様はこいつ等二人に対して一回だけ情けをかけてやるのだが、そんな俺様の優しを無下にするかの如くアントニーは強く歯ぎしりをしながら俺を睨みつつけ、母親は無言で射殺さんばかりに睨み付けくるではないか。


「あ? 何だその目は。まるで反省しているとは思えない態度だな。このまま処刑されたいのか? あと、謝罪の言葉も一向に聞こえてこないんだが? お前達に理解できるように話してやるけど、今俺がお前達を『処刑する』と判断したら即処刑される立場だという事を忘れてないか? 死にたいというのであればそのままの態度でも良いが、死にたくないというのであればそれ相応の態度というものがあるだろうが」

「も…………申し訳ございません」

「わ、私の息子が公爵嫡男であり次期当主様であるロベルト様に不敬を働いてしまった事を深くお詫び申し上げます……っ」

「ふん、心ではどう思っているかは知らないが、一応謝罪の言葉も聞けたので今回はそれで許してやろう」

「ありがとう……ございますっ」

「ありがとうございますっ。ありがとうございますっ」


 俺はそういうと、そのまま頭を地面に擦り付けている二人の横を通り過ぎていく。


 今までされて来た事を考えるとこれでも生ぬるいと思うし、本当は俺に頭を下げている二人に唾を吐きかけてやりたかったのだが、流石にその行為は三流過ぎるのでグッと我慢した俺様を誰か褒めて欲しいくらいである。

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