第66話 少しだけ目頭が熱くなる



 当然自分の息子に暴力を振るわれた所を見たアントニーの母親は発狂しながらマリエルに唾を飛ばし、今にも掴みかかってきそうな勢いで切れ散らかしている、というか魔杖を手提げ鞄から取り出そうとしている動作をしているので、喚き散らかしながらそのまま魔術で息子の仇を取ろうと暴力を振るうつもりなのだろう。


 その事にマリエルが気付いていない筈がないのだが、そんな事などお構いなしとばかりにバッサリと母親に対して『お前の息子が行ったバカな行為による自業自得だろう』と言い返す。


「そ、それは……そもそもそこのゴミクズが見下されても仕方がないような奴だからでしょうっ!! 言われたくなければその努力をすべきでしょうっ!! その努力を怠って『言われたくない事を言われたからやり返す』など、それこそこんな奴が本家の跡取りだなんて、クヴィスト家の面汚しが、うちのアントニーちゃんに対して怪我をさせて良い訳がないでしょうっ!? そもそもそこのゴミクズよりもうちのアントニーちゃんの方が圧倒的に優れているのですから、次期当主をそこのゴミクズにしてクヴィスト家を没落させるくらいならばうちのアントニーちゃんを次期当主候補にするように進言する予定だったのに……っ!!」

「……なるほど、そんな言い訳が通用できる世界ではない事くらいは知っていると思っていたのだがな、非常に残念だ。私からすれば処刑される可能性がある事すら理解できずに誹謗中傷をしてくるほど頭の弱いお前達の方にクヴィスト家を継がせた方がヤバいと、私は思うのだがな? それと何か勘違いしているかと思が、我が息子であるロベルトはハッキリ言ってこの私よりも頭が切れるぞ? その意味が理解できないだろうから教えてやるが、今までバカなフリをしてきたお前達の言動をじっくり観察していたのだよ。本物のバカを炙り出す為にね。とりあえずお前達に対する不敬に対してどのような罰を与えるかはロベルト本人に任せよう。当然どのような結果になったとしても私は一切助けない。それが例え処刑であったとしても、だ」


 そんなマリエルにアントニーの母親がマシンガントークでがなり立て始め、その間にも俺の事を『ゴミクズ』呼ばわりや侮辱したりなどし始めたのでサーシャとマリエルの目の色が変わるのだが、それを俺のお父様であるダグラスが前に出て彼女達二人を止め、アントニーの母親に言わせたいだけ言わせた後俺に変わって反論してくれるではないか。


 今までこうしていじめられた事は幾度となくあったのだが、父親がこうして助けてくれるのは初めてかもしれないと思うと少しだけ目頭が熱くなる。




────────────────




近況ノート(限定)にて74話(ストック分)まで更新いたしました。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る