第64話 痛めつけておきましたっ!
やはり見る目がある弟は師匠を選ぶ目もしっかりしているようである。
「可愛い弟の為であれば断る理由などないぞ。勿論リーリャ、お前もだ」
「ありがとうございますっ!」
「べ、別にお兄様に教えて欲しいとかそういうんじゃないけれど、ここ最近魔術で伸び悩んでいるので教えさせてやってもいいわよ……っ」
当然魔術や武術であればいくらでも教えてやっても良いと思っているし断る理由も無いのでその旨を弟のブライアン、そして興味がない風を装いながらこちらをちらちらと見て来るリーリャにも教える旨を答えると、ブライアンは感情のまま喜び、リーリャはすました反応をしつつも嬉しさを隠しきれていないのかによによと口元が動いているのが見て取れる。
流石にここまで反応に出ていればいくら俺でも『妹は、俺の事が嫌いではない』という事を汲み取る事ができるので、とりあえず妹弟との関係が壊れておらずこれからは良好な関係を築けて行けそうだという事が分かり、俺まで少しばかり嬉しくなってくる。
その後は現地に着くまで妹弟との間にできた溝を埋めるかの如くたわいのない会話をしながら馬車移動を楽しむのであった。
◆
「やっと着いたか……」
馬車に揺られて三日後の夕方、俺たち家族は目的地であるお爺様とお婆様との隠居先へと、これといったトラブルも無く着くことができた。
そして俺は先に降りたマリエル、サーシャに続いて馬車から降りる。
「お、誰が来たかと思うとクヴィスト家の面汚しではないかっ!! 良くこんなめでたい場に来れたなっ!! どの面下げて来たのかと見てみれば、相変わらずクズみたいな顔をしてやがるぜっ!!」
馬車から降りたばかりの俺に対して従兄妹であるアントニーが近づいて来ると夕日に輝く金髪をかき上げながら話しかけてくるではないか。
そんなアントニーの態度にサーシャが俺の方へ『処す? 処す?』と目で合図を送ってくるので『腐っても親族だから殺すな』と目で伝える。
「かしこまりました……」
「ぎゃぁぁぁああああっ!! 痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛いっ!! あがぁああああっ!?」
するとサーシャは俺と心と心で以心伝心ができたのと思った次の瞬間、アントニーの手首を取り、そのまま捻りながら地面へとアントニーのお腹側を押し付けて背中に乗ると、肘を逆方向へ容赦なく折るではないか。
『え? なにやってんの?』
『殺しては駄目という事でしたので痛めつけておきましたっ!!』
忘れていた……サーシャの頭の中が筋肉で出来ていた事を。
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