第63話 これだから男って生き物は
三歳ほど年下というのは大人になればさほど気にならない年齢差ではあるものの十代の三歳差というのは思っている以上に差がある物である。
今の俺の年齢が前世で言うところの高一であれば三歳下という事は互いの生まれ年によっては小学六年生である場合もあるのだ。
そんな、まだまだあどけなさの残る弟から目をキラキラと輝かせてそんな事を聞かれれば、やはり良く見られていたいし、そう見えるように答えたいと思うのが兄というものだろう。
「どうせ、大した理由じゃないわよ。お兄様の事だから『面倒くさい』とか何とか、そういう理由でしょう? でも、お兄様が正体を今まで隠してきたせいで私たちも周囲から奇異な目で見られていたという事はしっかりと理解してほしいわね。そのせいでわたくしの婚約者すら一向に決まらないという迷惑を被っているという事をお忘れなく」
そして一つ下の妹のリーリャには随分と嫌われてしまったようです。けれども、どこか嬉しそうな表情を我慢しているように見えてしまうのはきっと気のせいだろうし、流石に自意識過剰過ぎるだろう。
女性というのは怖い物で、同僚が簡単にお金を貢ぎ、両想いだ何だとはしゃいでいたけれども、結局その貢いだものは本命の彼氏とのデート代やコーデ等に利用されていたという地獄を何回か見てきた俺だからこそ女性の思わせぶりな態度は勿論『かもしれない』という不確かなもので行動するのは危険だと日々注意しながら生きている、自己防衛できる大人の男なのである。
……自己防衛できずに借金を背負わされた奴に言われたくない? 大丈夫、俺もそう思う。
「あえて言うのならば、男たるもの能力は隠した方がカッコイイだろう?」
「カッコイイ……ですか?」
「例えばあそこにいる腰の曲がったおじいさんが居るだろう? そのおじいさんが追い剝ぎに絡まれた時に実は冒険者ランクSS級の魔術師で、簡単にあしらったらどう思う? そのギャップにカッコよさを感じないか?」
「……確かに、そう思えるかもしれません。 それに、実際周囲の評価が反転したお兄様は物凄くカッコイイですし、今までお兄様の事を見下して来た人たちを見て『どうだっ! 僕のお兄様は、本当は凄いんだっ!!』という気持ちになりスッキリしますっ!!」
ふむ、どうやら弟は素質があるようだ。 このカッコよさが分かるとはなかなか見どころがあるではないか。
因みに妹はというと『これだから男って生き物は……』というような目で俺達を見ていた。
「それで、お兄様……その、暇な時間で良いのでこれから僕に魔術や武術などを教えて欲しいのですが……だめでしょうか?」
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