第61話 バカとハサミは使いよう
恐らく現段階でそうなのだろう。
それでも親馬鹿で何が悪いと思うし、ロベルトは間違いなく親馬鹿の私が思っている以上の能力を持っている可能性だってあるのだ。
それと同時に今まで我が息子をバカにして来た者達、それこそ血縁者達がこれから私とロベルトの元へと頭を下げ必死に縋りつく為に靴を舐めるかのごとく手のひらを翻す様が容易に想像できてしまい、今からその近い未来が楽しみで仕方がない。
私の息子である。
例え本当に靴を舐めたとしても今までロベルトにして来た事を思えば間違いなく許す事はないだろう。
そういう点で言うと、私の他の息子や娘、ロベルトにとって弟や妹達は兄であるロベルトをバカにしたり見下したりという事も無く本当に良かったと少しばかりホットしてしまう。
他の兄弟たちもロベルトの事を見下したりしていたのならば、なんてもしもの未来を考えたくも無い。
むしろその事を考えると私の子供達は薄々兄がバカの振りを演じているいという事に気付いていたのかもしれない。 であれば、他の兄弟たちも父親である私ですら気付く事ができなかった事に気付ける観察眼や直感などを持っているという事であり、それはそれでまた優秀という事になるのではなかろうか。
さすが愛している妻と私との間に産まれた子供達である。
そんな事を話しながら妻と飲む酒は格別に美味い。
少し前までロベルトの事でギスギスしていた空気が嘘のようだ。
私は今、この帝国、いやこの世界の中で一番幸せであると断言できるほどに、幸せである。
◆主人公side
講師とプレヴォとの口論の後、俺に対して嚙み付いてくるものはめっきり減って来たように思う。
そういう点で言えばプレヴォもたまには役に立つではないか。
こういうのを何と言ったか……バカとハサミは使いようだったか? まぁ良い。
流石に見下すような視線を無くしたり俺の悪評や評価を覆したりなどという事まではできないのだが、それでもあからさまにバカにしてくるような事も無くなったので前世の記憶が戻る前の学園生活と比べると過ごしやすさは段違いであろう。
まぁ、前世の記憶を思い出す前はそれら他生徒や教師たちが俺の事をバカにしているとは露ほども思っていなかったのでどちらが幸せだったかというと難しい問題ではある。
前世もこの世界でもそうなのだが、バカの方が幸せだったかもしれないと、たまに思う事がある。
しかし、今世の過ち、そして前世の過ちが何だったのか気付く事ができたので同じ過ちを繰り返さない事でより良い人生に繋げる事ができるのだから、やはりあの頃の、何も気付けていない頃の方が良いとは思わないし、知識を得るという事はそういう事なのだろう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます