第57話 正真正銘のクズ


「……あ?」


 元々この教師の事は鬱陶しいと思っていたし、日ごろのストレス発散する為に俺へちょっかいをかけていたようにも思えていた為、いい機会だと思いコイツをここからどうやって学園から追い出してやろうかと、脳内で楽しくシミュレーションをしていたのだが、そんな楽しい妄想を実行する前に横からプレヴォがしゃしゃり出て来るではないか。


 そしてそのプレヴォの姿を心配そうに見つめるオリヴィアの姿が目に入ってくる。


 プレヴォに関してはゲームの主人公になるような男なので、ウザいくらいに正義感が強うのだろうし、そのせいで周りが見えておらず状況を整理する前に感情で突っ走ってしまうような人物である事は理解できる。そうでないと世界を救う等という旅に出る訳がないし、理屈ではなく感情で動くからこそそれに感化されてそのふざけた旅に同行する仲間ができるのだろう。


オリヴィアに関してはそもそも俺が悪いので、婚約者であったとしてもあのような態度を取る事も理解できる。


しかしながら、どちらが正しいかどうか判断するまえに『どうせロベルトの方が悪いのだろう』と、俺の話しも聞かずに関係ない奴が間に入られるのも、そして俺がソイツに何かするかもと心配されるような雰囲気を出されるのも、身から出た錆と言われても腹が立つし『だからしょうがないか。今までの俺がみんなの信頼を無くすような行動を取って来たんだからね』などと甘んじて受け入れる程俺はできた人間ではない。


「何を言っているんだ? ソイツの謝罪を受け入れるかどうかは俺が決める事でお前がどうこういう話ではない。そもそもこいつが俺に今まで喧嘩を長い間吹っ掛けて来たんだ。むしろ今まで俺がそれを無視してやった事を良い事に、調子に乗って来たかから今日はその売られた喧嘩を買うというだけの話だろう。『売った喧嘩をまさか買うとは思わなかった。許してくれ』と言われた所で許すわけねぇし、俺が被害者でありコイツが加害者であるにも関わらず、俺が自衛のためにやり返したら被害者と加害者が逆転するとでも言いたいのか?過剰防衛等ならまだその言い分も分かるが、俺が不当な扱いをこの学園の講師から受けていると両親と学園に訴える事が過剰防衛とでも言うのか? この状況を整理する事も無く『あのロベルトだからロベルトが悪いに決まっている』と間に入って来て被害者である俺を責め立てるお前は正真正銘のクズじゃねぇかよ」

「ち、ちが──」

「違わねぇよ。お前がした行為は『どちらが正しいか』ではなくて『こいつが嫌いだから』で悪者かどうか判断しているクズだろうがよ」

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