第54話 脅しにしか聞こえない
お父様はそう言うとガーランドの肩を抱いて嬉しそうに食堂へと向かうのだが、それとは対照的にガーランドは処刑場に送られるような表情をしているのが印象的である。
そしてガーランドの娘であり俺と同じクラスの同級生でもあるサーシャは何故か頬を少しだけ赤らめて俺の方をちらちらと見てくるではないか。
その視線を遮るようにマリエルが俺とサーシャとの間に移動すると、何故か二人は睨み合い始めるのだが、俺に実害は無いと判断して放っておくことにする。
食堂には既にお母様が席に座っており豪華な食事と高そうなワインがグラスに入れられていたので、各々席に着く。
因みにマリエルは奴隷ではあるものの俺は同じ席に座って同じご飯を食べるように言いつけているので、俺の隣に座っているのだが、そんなマリエルに対してサーシャは恨めしそうな視線を送り、マリエルはどこか勝ち誇っているような表情をしているように見るのだが、これもまた俺に実害は無さそうなのでスルーである。
「それでは、あの鬱陶しいシャンドス公爵家元当主を息子が潰した事へ、乾杯っ!!」
「「「乾杯っ!!」」」
俺が潰したシャンドス公爵家の元当主が居なくなった事がよほど嬉しいのかお父様は今まで見た事もないくらい上機嫌である。
「一時は貴様等冒険者ギルドへはどのような落とし前を付けてもらおうかと思っていたのだが、ある意味で冒険者ギルドがシャンドス公爵家とズブズブな関係であったからこそ言い逃れできない程の証拠が集まり、シャンドス公爵家を追い詰める事ができたと考える事もできよう。最早あの家は老いぼれの先代と、息子と同い年の嫡男、二個下の次男しかいなくなってしまった。例え取り潰しまでは行かなくとも今回の悪行により風当たりが強く、更に周りから人が離れて行ってしまっている現状と現役世代が居ないという事などなど、それこそ我が息子レベルに有能でなければ衰退していく運命であるのは間違いないだろうっ!! そして帝国四大貴族は三大貴族になり、更に我が家の権力は高まっていく事だろうっ!! 何より他の貴族と違い我が家を継ぐのは何と言っても我が息子だからなぁっ!! そういう点では我が家の輝かしい未来を確実のものとした切っ掛けを作った冒険者ギルドには感謝してもし足りないくらいだっ!!」
上機嫌に話すお父様なのだが、どう考えても『今回は我が家の利点となった為見逃してやるが、裏切ったらどうなるか分かっているだろうな? こちとら今回の件で大量の証拠を握っているという事を忘れるなよ』という脅しにしか聞こえないし、実際にそうなのだろう。
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近況ノート(限定)にて62話(ストック分)まで更新いたしました。
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