第50話 平民よりもさらに下の人間



「ぐぅ……貴様、こんな事をしておいて……ただでは済むと思うなよ?」


 俺様は公爵当主である以上常に暗殺をされる事を意識して生活しており、その対策として高い金を支払い【死に直結する自分に与えられるダメージを二度無効化する】というアイテムを常に身につけていたお陰で相手の攻撃を無効化できたようである。


 もしそのアイテムを身に付けていなければ、俺は死んでしまうレベルのダメージを二度受けてしまう事になっていただろう。


 残念ながら地面に落下した時のダメージまでは無効化する事はできなかったのだが、死ぬほどではく、こうして生きているのであれば問題ないだろう。


 ここ最近は公爵としての仕事で忙しかった為あまり鍛錬は出来ていなかったのだが、これでも魔術師としては宮廷魔術師レベルの実力を持っているのだ。


 この俺様を急に襲撃してきた者が誰であろうと、この俺様を殺しきれなかったのが運の尽きだろう。


「なぁ、悪役には大まかに二種類いると知っているか?」

「あ?」

「お前は誰が見ても紛うことなき悪党だというだろう。他人が自分のせいで不幸になろうとも関係ない。それよりも自分の欲望を満たす事が最優先。それが違法行為であれば公爵家としての権力と資金力で揉み消すクズの所業。前世の記憶を思い出す前の俺ですらお父様に怒られると思いそこまでの行為は怖くてできなかったのをお前は息をするように、毎日のように行っていた。まさに悪の中の悪と言えよう」

「さっきから何の話だ? そもそもこの俺様に向かって悪党だと? 不意打ちで攻撃してきた事と言い、不敬にも程があるだろう。お前も公爵である俺様に対して行った無礼な言動により不敬罪として今この場で処刑してやろうっ!! そもそも、この世のルールは俺様なのだっ!! 俺様が良いと言えばそれは良いのだっ!! 覚えておけ小僧っ!!」

「あぁ、良いっ!! 良いねぇ、その悪役ムーブっ!! でも、先程の、答えになるのだがこの世界には二種類の悪役、カッコイイ悪役と糞ダサい悪役の二種類がいる訳で、お前は後者。そう糞ダサい悪役になる訳だっ!! そして魔術に自信があるようなのだが、詠唱も遅ければ段位も四と自信があるとはとても言えない低さっ!! 何もかもがダサいっ!! ダサすぎるっ!!」

「くそっ!? 何で俺様の魔術が途中でかき消えてしまうのだっ!! 貴様、何をしたっ!? 卑怯だぞっ!!」

「卑怯だ? お前にだけは言われたくないぞゴミクズが。そもそもお前は既に公爵でもないんだよ。既にお前の悪行は皇帝陛下に伝わっており爵位は剥奪、そのままお前の父親に一旦移されている上に、お前は指名手配され処刑が決まっている罪人。要はお前が見下している平民よりもさらに下の人間なんだよ」

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